ブックタイトルagreeable 第14号(平成22年4月号)

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概要

agreeable 第14号(平成22年4月号)

寄稿5 Agreeable 2010/4? 復元建造物の利活用の事例① 首里城那覇市首里の高台に位置する首里城では、平成4年の一部開園以降も引き続き復元整備事業が進み、歴史的景観が甦ってきています。ここでは年間を通じて、首里城でかつて執り行われていた正月の儀式の再現、仲秋の宴、首里城祭など多くの伝統的なイベントが展開され、公園利用者に親しまれています。また、城内でほぼ毎日琉球舞踊が演じられており、琉球王朝の華やかな雰囲気を感じ取ることができます。このように、首里城に相応しいイベントが展開されることで、王朝文化がより身近に感じることができます。これも、首里城が往時の姿で復元され、歴史的景観が甦ったことで可能となったのです。② 喜名番所番所とは、琉球王府時代の役所(行政施設)のことで、かつては県内各地に存在していました。沖縄戦でほとんどが消失しており、古絵図や古写真などにその存在が知られている程度です。その中で、読谷村喜名にあった番所は、戦前まで村役場として使われており、唯一の写真も残っていました。地元の人達から復元が待望されていたこともあって、世界遺産関連事業によって木造で再現されました。さらに、前面の道路なども整備されました。喜名番所は観光案内所、休憩所として、さらに地域の人々の交流の場として活用されています。専属の案内ガイドが読谷村の歴史や文化、村内に点在する文化財や主な施設などを利用者に紹介しています。? 世界遺産とその活用世界遺産が所在する市町村では、補助事業を活用して、道路や便益施設、案内板などの整備を行っており、多くの人々が気軽に訪れることができるようになっています。座喜味城跡や中城城跡の城内空間では、地元にゆかりのある史劇を上演するなど、ユニークな活動が注目されています。また、識名園では、古式に則った結婚式を行ったり茶会を開いたりするなど、文化財活用の一つの方向性を示しています。さらに、中村家住宅や銘苅家住宅でイベントなどが開催されています。このように、歴史的建造物を現代に活かす試みは県内各地で行われるようになってきました。? 古民家のリニューアル沖縄本島南部の糸満市に「真ま壁かべちなー」と呼ばれている民家があります。この民家は、築110年余りを経ていますが、一部補修して「茶処」として活用しています。最近、このような木造の古民家を現代に活用する事例が増えてきました。訪れる人々は昔の民家の風情を楽しみながら料理や飲み物を味わうという至福の時を過ごすのです。4.これからの展開去る沖縄戦においてことごとく歴史的建造物が破壊されてしまい、往時を伝える遺構の多くがこの世から消滅しました。そのため、実践的な古建築研究が育ちにくい状況が長く続いていました。そのようななかで、徐々に往時の建造物の復興が進められてきました。これらの事業を積極的に推進することで、沖縄の歴史的景観が再現されることになり、大工や石工、瓦職人、塗り職人達の育成にもつながります。伝統技術の継承という意味からも意義のあることと思います。また、これらの施設を地域の人達が積極的に活用する試みも注目されており、地域の独自性が再認識されることになります。なお、課題として、県内各地にかろうじて残っている木造建築物の老朽化が著しく、緊急の対策が必要です。また、円覚寺や崇元寺など、かつて旧国宝に指定されていた琉球建築の復元も望まれています。先人達が築いた伝統技術の中には普遍性の高い技術が存在していることに気づきます。木材の継手・仕口などがそうです。ハード、ソフトの両面で、古いものと新しいものとの共生を目指す動きは既に始まっており、先人たちの思いを後世に伝え、新しい建築文化の創造を推進していくことは重要なことであると考えます。首里城御庭での正月儀式喜名番所(正面)