ブックタイトルagreeable 第18号(平成23年4月号)

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概要

agreeable 第18号(平成23年4月号)

7 Agreeable 2011/4れることはないでしょう。平成22年4月の化審法改正は、グローバル化する化学物質の規制を背景に、ハザート管理重視に加えリスク管理重視の規制にシフトする世界の動向に対応したものです。平成19年に行った欧州におけるREACH規則施行の影響が大きい。改正のポイントは、新規化学物質に義務づけられていた製造・輸入実績数量等の届出や有害性、製造・輸入状況等に基づく判断などの事前審査が、既存化学物質にも義務付けられることです。問2 消費者庁の発足により、より消費者保護に重点を置いた政策が打ち出されてくるものと思われますが、「木材保存剤の安全性」に関してこれまでとは違った形での要求が出てくる可能性はありますか?答 平成21年9月に、「消費者庁」と「消費者委員会」が内閣府に新設され、これに関連して「消費者安全法」が施行されました。消費者の目線に立って、国(消費者庁)と地方(消費生活センター)が連携して情報の収集を行い、被害防止や安全確保の推進を図ろうとするものです。これによって、「製造物責任法(PL法)」が消費者庁に移管されましたので、木材保存剤の施工により住人に健康障害が生じた場合、この法律による責任が問われることになります。事業者の皆さんは、安全な製品の製造、工程管理、製品の検査、表示や取扱説明書の適正化やアフターケアの充実により、被害防止や安全確保の向上に一層の努力が求められます。消費者の皆さんは製品の適正な選択、使用および保守および使用記録の保管などに努めることが重要です。問3 建築基準法改正によりシックハウス対策に係る法令が、平成15年7月に施行されました。シックハウス対策のための改正ポイントはどのようなことですか?答 シックハウスの原因となる化学物質の室内空中濃度を規制することにあります。住宅、学校、病院、事務所などあらゆる建築物の居室が対象になります。規制を受ける化学物質としてホルムアルデヒドとクロロピリホスが該当し、従来使われていた有機リン系シロアリ防除剤クロロピリホスが、この改正により、使用禁止になりました。尚、この改正に基づく規制は、平成15年7月以降に着工された建築物に適用され、これ以前のものには適用されません。問4 シロアリ防除剤と農薬殺虫剤の違いは何か?答 農薬殺虫剤は農業生産現場で農業害虫を防除する目的に使用するもので、国の登録制度が適用されている物質です。無登録農薬は使用禁止です。シロアリ防除剤は不快害虫(家屋害虫)を防除する目的に使用するもので、化審法において化学物質に登録されている物質に限られます。審査委員会で審査を受け、協会から認定を受けた薬剤です。シロアリ防除剤の有効成分には、現在も農薬として使用されている物質も含まれていますし、農薬として使用されていないものも含まれています。問5.シロアリ防除剤の安全性と農薬殺虫剤の安全性の違いは何か?答 農薬殺虫剤は農薬取締法に基づいて安全性の評価を受けますが、各種の安全性試験は優良試験所基準(GLP)制度に適合した施設において実施されたものであることが要求されます。また使用にあたっては農薬使用基準に基づき、作物ごとに使用時期、使用薬剤、使用方法(用法、用量)が定められ、これを遵守しなければなりません。これに違反すると罰せられます。シロアリ防除剤は、財団法人日本住宅・木材技術センターが定めた「木材保存剤等性能審査規程」に従い、性能や適格性のデータに基づき、防除剤としての適否に付いて審査するしくみになっています。また、農薬の安全性基準に準拠した「安全性に関する説明書記載要領」を定め、安全性に関するデータや説明資料の提出が求められます。これには、居住空間における空中濃度測定も含まれています。木材保存剤の安全性審査に申請される各種試験成績は、原則、GLP制度に準拠していることが求められます。問6 木材保存剤の本来の使用目的、用法、用量を逸脱して使用した場合に起こりうる弊害(問題)及び法的処罰はどのようなものが考えられますか?答 木材防除剤は化審法の規制を受け、原則、GLP制度に適合した機関で各種安全性試験が実施された薬剤を審査するシステムをとっています。使用目的、用法、用量を逸脱して問題が生じた場合、施工業者または使用者個人の責任となります。シロアリ防除剤は、農薬や家庭用防虫薬などに比べ、単位面積当りの施用量が格段に違います。薬剤の多量処理により、漏出や流出は居住空間の汚染(シックハウス)や土壌水界汚濁(環境汚染)を招き製造物責任法(PL法)や環境汚染防止法に觝触する可能性が出てきます。また、消費者庁に移されたPL法では、施工により健康障害が生ずると事業者、消費者ともに問われます。農薬と違い木材防除剤に法的規制がないために、罰則規定のない自主基準を設けて安全性の審査を行っている現状ですが、協会に登録した薬剤を選択し、定められた使用目的、用法、用量を遵守し、安全対策に努めることが重要です。おわりに本稿を執筆するにあたり、原稿の校閲を賜りました千葉大学名誉教授本山直樹氏、財団法人残留農薬研究所加藤保博氏、財団法人日本住宅・木材技術センター杉山慎吾氏に感謝申し上げます。また、本稿の執筆を引き受けるにあたりアドバイスを頂きました独立行政法人森林総合研究所大村和香子氏に感謝致します。参考資料①しろあり防除施工における安全管理基準(1997)社団法人日本しろあり対策協会②木材保存剤ガイドライン(2005)社団法人日本木材保存協会③木材保存剤の審査の記録(2009)日本木材保存剤審査機関