ブックタイトルagreeable 第19号(平成23年7月号)

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概要

agreeable 第19号(平成23年7月号)

1 Agreeable 2011/7日本でもようやく建物を長寿命化する必要性が認識される時代に入ってきましたが、木造住宅をはじめとした木造建築物においては、その要請がひときわ強いものと考えられます。この木造建築物の長寿命化のためには、定期的な構造体の点検、とりわけ木造建築物の寿命を決めると言われているシロアリ被害と腐朽被害についての点検が不可欠になることは言を待たないところですが、残念ながらそのための社会的な気運はなかなか高まっていません。そこで、?日本しろあり対策協会蟻害・腐朽検査制度委員会では各時代の木造建築物の象徴とも考えられる各種文化財建造物を取り上げ、その蟻害や腐朽に関する点検を協会の社会貢献活動の一環として実施することで、建物長寿命化の重要性を訴えるとともに、広く社会一般に蟻害や腐朽検査の必要性を喚起していきたいと考えています。今回出版された「文化財建造物の蟻害・腐朽検査マニュアル」(執筆者:森本桂九大名誉教授、山野勝次文虫研理事、福田清春東京農工大教授、堤洋樹前橋工大准教授、中島正夫関東学院大学教授)は、以上のような文化財建造物を対象とした蟻害・腐朽検査が協会員共通の知識、認識、方法のもとに実施されるように、文化財建造物の種類、構造などの建築的な基礎知識に加えて、文化財の生物劣化被害の実態と特徴、そしてそれらに基づく検査・診断の実際あるいは報告上の要点などをなるべく簡潔に分かりやすく解説したものです。第1章の序につづき、第2章では文化財の種類および本書で扱う文化財の範囲を明示するとともに、その保存に向けた蟻害・腐朽検査の重要性について述べています。第3章では本書の取り扱い範囲とする文化財建造物の種類と構造について、神社、寺院、城郭、住居、蔵、門、茶室・数寄屋、木造洋風建築物などに区分してそれぞれの概要を解説した後、検査に不可欠な部材名称や接合法、部材別の代表的樹種などについて説明しています。第4章では文化財を対象とした既往の劣化調査事例を紹介した後、文化財建造物において蟻害、腐朽被害が生じやすい箇所と部位など、検査上注意すべき被害の実態や特徴などについて解説しています。つづく2つの章では加害生物別の生態や加害特性についての基礎知識を述べており、第5章は文化財に多いシロアリ以外の虫害について、第6章はシロアリと腐朽について解説しています。そしてそれらの基礎知識をもとに実際の建造物の検査診断方法を示したものが第7章であり、腐朽と蟻害に共通する検査対象部位などの一般事項を説明した後、それぞれの検査結果にもとづく診断方法を示しています。最後の第8章は、検査、診断結果をどう報告書にまとめるかを示したものであり、報告書に記載すべき必須事項と報告書作成上の留意点に分けて説明しています。なお、巻末の付録には、読者の便に供すべく文化財加害昆虫類に関する主要参考文献を公刊年代順に整理しています。現在、作業が進行している協会の公益法人化に際しては、蟻害・腐朽検査が主要な公益事業の柱の一つになると聞いています。本書が既に公にされている「蟻害及び腐朽の検査診断手順」とともに、会員諸氏の木造建築物全般の検査技術の向上に少しでも役立つところがあれば、編集・執筆者一同、これに優る喜びはありません。「文化財建造物の蟻害・腐朽検査マニュアル」発刊にあたって中島正夫前蟻害・腐朽検査制度委員会 委員長「文化財建造物の蟻害・腐朽検査マニュアル」表紙