ブックタイトルagreeable 第20号(平成23年10月号)

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概要

agreeable 第20号(平成23年10月号)

Agreeable 2011/10 10ひろば黒船来航の2年前、1851(嘉永4)年、ロンドンハイドパークでの第1回万国博覧会の開催を記念してビクトリア女王ご臨席のもと、ワイト島1周ヨットレースが、英国15艇に加えて当時の新興海軍国であった米国のアメリカ号が招待参加して開催されました。結果はアメリカ号の圧勝でロイヤルヨットクラブ伝承の優勝トロフィーはアメリカに渡り、以来、英国には一度も戻っていません。このカップはビクトリア女王から下賜されたもので、英国王室御用達の宝石商ギャラードが100ギニーで製作した約4㎏の純銀製の水差しです。正確には一度だけ、カップは英国に戻っています。ニュージーランドが奪取したときにマオリの活動家によって壊され、ギャラードに修理のために里帰りしています。アメリカ号のゴールを見たビクトリア女王は傍らの侍従に2着は?とおたずねになり、その時、侍従曰くYour Majesty, there is no second.この言葉からアメリカズカップの伝説が始まったと言われています。アメリカ号のオーナー達はこの100ギニーカップを「カップの保持者はいかなる国のヨットクラブの挑戦も受けねばならないと記した贈与証書(Deed of Gift、現在もアメリカズカップの憲法として効力を持っている)とともにニューヨーク・ヨットクラブに寄贈し、アメリカ号のカップ、すなわちアメリカズカップの争奪を行う第1回アメリカズカップが1870年に開催され、南北戦争や二度の世界大戦による中断はありましたが現在に至っています。次回第34回大会は、防衛艇オラクルレーシングチーム(前回優勝時はBMWオラクル、今回BMWと提携を解消)が所属するゴールデンゲート・ヨットクラブのあるサンフランシスコにおいて2013年9月7日?22日、挑戦艇決定シリーズのルイヴィトンカップが同年7月13日?9月1日に開催されることが決まっています。昨年、バンクーバー冬季オリンピックの開催直前、バレンシアで行われた第33回アメリカズカップで世界第2位のソフト会社オラクルのオーナー、ラリー・エリソン(彼自身、優秀なヨットマン)率いるBMWオラクルが防衛艇ソシエテ・ノーティーク・ドゥ・ジュネーブのアリンギチームに圧勝して、1995年第29回大会以来アメリカを離れていたカップを持ち帰ったのです。アメリカズカップに優勝賞金はなく、ただ単に銀製カップを保持する栄誉のためにラリー・エリソンは2億ドルを投じたといわれています。同行スタッフがエコノミークラスで戻ったのに対して、カップはルイヴィトン製の特性トランクケースに収まり、ファーストクラスの座席に乗せられてバレンシアからサンフランシスコに戻り、ゴールデンゲート・ヨットクラブまで、白バイとパトカーの先導で凱旋パレードが行われました。アメリカズカップは多くの伝説の人物を生んでいますが、現在はニュージーランド人、サー・ラッセル・クーツかと言えますが、クーツについては後述します。まず、なんと言ってもアメリカ人デニス・コナーです。1983年第25回大会でオーストラリアに敗れ防衛に失敗したデニス・コナーはカップを失った最初のアメリカ人と非難され、ニューヨーク・ヨットクラブを追われてしまいます。1987年第26回大会でサンディエゴ・ヨットクラブから参戦したコナーはカップの奪還に成功し、ロナルド・レーガン大統領からホワイトハウスに招待され、ミスターアメリカズカップと称されるようになります。しかしながら、コナーは1995年第29回大会で再びアメリカズカップを失い、カップを2度失った最初のアメリカ人という汚名を着ることになりました。コナーの前の伝説の人物としては、紅茶王のサー・トーマス・リプトンがいます。エドワード7世から、当時こじれていたアメリカとの関係改善とカップの奪還を要請され、1899年第10 回大会から参戦します。以後、1930年まで5大会連続で挑戦しますが一度も勝利することなくこの世を去りました。筆者は2000年、ニュージーランドのオークランドで開催された第12回世界地震工学会議に参加した折に第30回大会に遭遇しました。アメリカズカップに魅せられて土井 正大阪市立大学