ブックタイトルagreeable 第21号(平成24年1月号)

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概要

agreeable 第21号(平成24年1月号)

 世界にはさまざまな住まいがあります。住まいの多様性はその地域の気候風土と密接な関係によって生み出されています。わが国の気候風土は総じて海洋性の穏やかな気候であり、また、季節風による雨風が多いこと、夏は高温多湿になるが豊かな自然と四季があり、自然と一体となった生活を好んできました。日本の住まいは、兼好法師が徒然草五五段に「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にもすまる。暑き頃、わろき住居は堪へがたきことなり。…」と書き記したように、夏の蒸し暑さを少しでも快適にしようと開放的で風通しがよくなるような南方的な住まいの工夫がされています。また、豊かな森林から得られる木材によって住まいが構成されています。木材のような細長い部材を縦横に組んだ軽快な架構式の軸組み構造となっています。伝統的な構法では簡素で開放的で、通風を重んじ、水はけを良くする勾配屋根や、自然とのつながりを得るために縁側を備えています(図1)。 伝統的軸組構法では地震に対して、現在の免震工法のように基礎の代わりの玉石などと軸組がつながっていないため、地盤の揺れが伝わりにくくなっています。さらに、土壁と貫といった水平の板材で柱壁を構成していることから、変形しやすく土壁の脱落や軸組の変形によって地震力を吸収する、力に逆らわない仕組みの住まいとなっています。また、壁は柱と柱の間に設けられる真壁構造になっています。 しかしながら、現在の木造住宅は在来軸組構法と呼ばれていて、伝統的な軸組構法とは違った仕組みになっていることを、一般の住まい手にはよく理解されていません。明治以降になって地震災害の研究が進み、地震や台風に対しては、しっかりした基礎を造ってアンカーボルトで軸組をしっかり結び付け、壁には筋かいを入れて変形しないように力で抵抗する仕組みが求められています。都市部では防火性能を高めるために外壁はモルタル壁などのような大壁構造が一般的になっています。さらに、石油ショックや地球温暖化問題など省エネルギーが強く要請されているため、開放的な通風を重視した構造から、閉鎖的な、どちらかというと寒冷地に建つ住まいの構造に変わってきているのです。ところが、住まいを取り巻く自然環境は変わっていないため、蒸し暑い自然環境に閉鎖的な住まいが置かれている状況になっています。現在の木造住宅は耐震的には向上した構造ですが、しろあり被害や腐朽等の点検が容易であった開放的な軸組構法から全体的に通風しが悪く、構造部材の点検が容易でない、耐久性に十分な配慮が必要な住まいになっていることを理解することが大切です。このことを疎かにしてきたため、阪神・淡路大震災で大きな被害を出すことになったのです(図2)。(次号へ)大阪市立大学生活科学部 土井 正建築の知識頑丈で長持ちする木造住宅木の住まい第一回図1 伝統的軸組構法の一例(掛川城御殿、1854年安政東海地震で倒壊し、再建されたもの床下に基礎がないため向こう側が透けて見えている)図2 阪神・淡路大震災で倒壊した住宅(隅柱の柱脚部が蟻害のため折損している)5 agreeable vol.21 january 2012/1