ブックタイトルagreeable 第22号(平成24年4月号)

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概要

agreeable 第22号(平成24年4月号)

 全国の消費生活センターに寄せられた訪問購入(押し買い:「着物を買い取る」と電話してきた業者が来訪。「ついでに貴金属を鑑定する」としつこく迫られ、10万円以上した指輪など3点を1、700円で売ってしまった60代女性)の被害が増えるなか('07年度30件、'11年度3、325件)消費者庁は、特定商取引法を改正し、規制する方針を固めた。 高齢者への勧誘を禁止し、書面の交付も義務づける。さらに訪問販売と同様に8日間のクーリングオフを導入する。期間中は売却した業者に商品を渡さず手元に置いておくことを可能にするとしている。 今回は「高齢消費者相手のリフォーム詐欺の事例」(札幌地裁H17年判決)について記述します。(事例の概要) H16年、(株)Aは、高齢者(79才)Bとの間で灯油タンクの取替工事、床下への消臭目的での調湿剤の敷設、配水管の取替工事などを内容とする請負契約をBの自宅で1か月の間に3回締結した。(契約) これらの契約はAの社員が相次いでB宅を訪問し、灯油の漏れや床下の臭気や下水漏れなどの状況をBに説明し、その修繕と消臭などを目的として行われたものである。Bは当然これら灯油の漏れや水漏れなどの事実があったものと信じ込んでいたが、そのような事実を裏付けるような確たる証拠は一切存在しなかったうえに、締結された契約書も工事費用の内訳が明確ではなく、また消臭効果があるとして床下に敷設された調湿剤も、灯油に対する消臭効果が明確でないうえに、仕様書では厚さ1.2センチ程度に敷設すべきものを約12センチの高さまで敷設し、かつその請負代金も異常に高額であった。 契約当時Bは79才で、妻と2人暮らしをしており、両人とも認知症を発症していた。契約から約3か月後、Bは家庭裁判所において後見開始の審判を受け、長女が成年後見人に選任されている。 AはBに対して契約の未払代金を請求する訴訟を提起した。(甲事件) これに対してBは、契約の詐欺による取消しの意思表示をしたうえで、既に支払った契約の代金額等を損害としてAに対する損害賠償請求の反訴を提起した(乙事件)事案である。(判決の要旨) 裁判所は、本訴のAの請求を棄却し、反訴のBの損害賠償請求を認めた。判決では、Aの社員らのした証言の矛盾点などを指摘したうえで、次のように述べている。「AはBに対し、灯油漏れや水漏れ・逆勾配の事実が無いにもかかわらず、これがあるかのように説明して判断能力が相当減退したBをしてその旨誤信させて、必要もなくかつ高額な工事の施工を内容とする本件各請負契約を締結させたものと認められる。そして、このような行為が複数のAの社員によって繰り返し行われていることに照らすとAによる組織的な行為であるというべきである。 そうするとAがBとの間で本件請負契約を締結した点については、Aの不法行為(誰かある人が他人に損害を加えた場合に、一定の要件の下でその加害者に、被害者に対する損害賠償義務を発生させる制度を言う。)が成立し、Aは不法行為に基づく損害賠償責任を負うというべきである。(乙事件) また、Bは本件請負契約について詐欺を理由として取消しの意思表示をしているのであるから…、同契約は取り消されたこととなり、…Aの請負代消費者目線で読むアペックス(株)  坂本 輝美特定商取引法と改正特定商取引法第二回agreeable No.22 april 2012/4 6