ブックタイトルagreeable 第23号(平成24年7月号)

ページ
13/22

このページは agreeable 第23号(平成24年7月号) の電子ブックに掲載されている13ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

agreeable 第23号(平成24年7月号)

が自主的に工夫をこらしながら、さまざまなルールを活用して、ルールに適合した健全な経営をしていくことがコンプライアンス経営と言われるものである。 コンプライアンスでは、法令などの政府レベルの規制だけではなく、行動規範とか実務基準をも遵守の対象としていくことが不可欠であり、特に他の企業の模範となるべき大企業には法令の規制以上の倫理的な行動も期待される。そこには新たな企業文化や高い信用の創造という狙いもあり、こうした行動規範や実務基準を社内ルールとして具体化し、実践する体系をコンプライアンスと呼んでいるのである。(法の不完全性) 法律を守るべきことは当然のことであるが、法律だけでは不完全なケースが多々ある。したがって企業倫理までを対象とすることが望ましいのである。法律が不完全であるというのには①適用に際しては、法律は、実質的な判断をしようとするが解釈も分かれることが少なくない。(学説等)さらに判断する人によって基準が必ずしも一定ではない場合も多い。そのために最終的にイエスかノー(オール・オア・ナッシング)で白黒をつけることには限界がある。②法律そのものの内容が不完全であることも少くない。人間が法律を作る限り、法律の不完全性は永遠に埋まらない。したがって次々と新しい法律が作られているのである。さらに法律を守っているからといって、胸を張れるようなものではないし、最低レベルのルールに違反していないというだけで、社会的に行なうべきことを本当に行っているとは限らず、適切な行動をしているといえるかどうかについては、さらなる吟味が必要となる。正当性を主張しようとする場合には、法的な立場だけでなく、倫理的な立場からも検討しなければならないのである。③手続や実行するための制度も不完全なケースが多い。いわゆる「ざる法」のようなものも少なくない。何か問題が生じたときに「法律違反はなかった」と説明しても、それが必ずしも納得のいく説明や弁解には聞えないということが生じてしまうのである。法律を守らなければ大きな非難を浴びるのは当然であるが、法律を守っていれば十分であるともまた言えないのである。法律の不完全さを補うための倫理的な視点も必要である。(ルールの運用・運営) コンプライアンスにおいては、どのようにルールを運用していくかという課題が重要である。企業では、自分たちで社内ルールを作っている。しかし自分たちが守りやすいようなルールしか作っていないことが多い。消費者や第三者の目を意識しない都合のよい基準を作っても、これからの企業社会ではリスクが高まるばかりである。企業倫理の観点からも、社会から広くその企業に期待された内容のルールを作っていくことが求められる。 企業は事業活動を行なって社会に必要な資材や便益を万全な形で提供していくことが求められており、コンプライアンスという言葉には、そのような気持ちが込められている。社会に有益なモノやサービスを提供する活動は、適正かつ健全であってこそ、はじめて事業として完全なものと認められる。それはコンプライアンスの究極の目標でもある。ただルールを守りさえすればいいというのではなく、企業が申し分のない適正健全な活動をすることによって、はじめて事業活動として完全なものとなる。すなわち、できる限り完璧な行為が求められるという観点からその組織的な取り組みのあり方を考える点にコンプライアンスの要諦がある。 コンプライアンスは、企業組織の運営における問題であって、個人的な仕事のやり方や課題をテーマとするもの「世間は誠実な企業に好感を持つ」 2005年12月から翌年にかけて、次のようなテレビCMが繰り返し放映された。「メーカーから大切なお願いです。古い年式の石油暖房機を探しています。…万一の場合、死亡事故に至る恐れがあります。至急ご連絡をお願い申し上げます。」この年の1月、古い石油暖房機の使用によって死亡事故が起きた。製造元の家電メーカーは4月に記者会見を行い事故の原因がホースの劣化にあったことを発表した。ホースに亀裂が生じて不完全燃焼を起こしていたのである。メーカーはすぐにリコールを開始したが11月にまたしても同様の事故が起きた。そこでメーカーはこの事態に対応するために、CM の放映を開始した。このCM は10日間の放映直後に1500名を対象に行った「CM好感度調査」では、好感度68.7%で、消費者は好感を抱いた理由として「企業姿勢にウソがない」ことを挙げている。このことは、企業が本来の意味での「コンプライアンス」の姿勢を貫いていれば、たとえ不祥事が起きても、その危機をはね返すことができることを示している。実例(2)11 agreeable No.23 july 2012/7