ブックタイトルagreeable 第23号(平成24年7月号)

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概要

agreeable 第23号(平成24年7月号)

を有効に利用することができれば、より簡単な方法で繊維の分解ができる可能性があります。具体的に言うと、木質系の廃棄物やガレキなどから、簡単な方法でブドウ糖を生産できるかもしれません。現在、シロアリセルラーゼ遺伝子を大腸菌や酵母へ導入してその大量生産を行おうという取り組みが日本の研究者によって進められています。シロアリによるエネルギーガス生成 シロアリ共生微生物が繊維を消化する過程で水素が発生することを先ほど紹介しました。水素は燃えても二酸化炭素を全く発生しない最もクリーンなエネルギーガスです。また、この水素を使ってメタンを生成するメタン菌という細菌もシロアリの腸内には棲んでいます。皆さんご存知の通り、メタンは天然ガスの主な成分です。つまり、シロアリは水素とメタンという、人間にとっても大変重要なエネルギーガスを生産しているのです。ちなみに、シロアリから発生する水素とメタンのバランスは、水素を生成する微生物と水素を消費してメタンを生成する微生物のバランスによって種ごとに決まっていて、イエシロアリでは水素がメタンよりもかなり多く発生しますが、ヤマトシロアリではほぼ同じ割合となります。もちろん、シロアリ以外にも水素やメタンを生産する生き物はいますが(例えば、ウシのゲップにも水素とメタンが多く含まれています)、シロアリは最も効率よくこういったエネルギーガスを生成することがわかっています。 シロアリの能力を使って水素やメタンを大量に生産しようという取り組みが行われています。図は筆者の研究室での実験結果ですが、抗生物質を取り込ませることによって、イエシロアリからの水素発生量が4倍になっていることがわかります。この発生量を100万頭のイエシロアリコロニーに置き換えてみると、1日で約10リットルの水素を生成させることができることになります。また、水素を効率よく発生する微生物を大量に培養して、サトウキビの搾りかすなどの農産廃棄物やパルプ廃棄物、あるいは木質系廃棄物などからエネルギーガスを回収しようという試みもなされています。 以上、今回はシロアリの能力を人間社会に活かす取り組みについてお話しました。次回の4回目は、今日本でその被害が拡がりつつあるアメリカカンザイシロアリについて紹介したいと思います。図 抗生物質処理によるイエシロアリからの水素生成量の増加。黒線が無処理、その他の線が種々の抗生物質による処理3 agreeable No.23 july 2012/7