ブックタイトルagreeable 第25号(平成25年1月号)

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概要

agreeable 第25号(平成25年1月号)

生活もままならないのは当然です。 お婆さんの奇怪な行動と現況に圧倒されつつ、予習してきたカウンセリング4 4 4 4 4 4 4 を開始しました。とにかく私からは一切質問せず、まずはお話を聴くことに徹しました。 ◎不可解な言動 お婆さんから直接聞き取りした結果① 夏ごろから毎日身体を刺されてチクチク痛い。② 寝室でもリビングでも、家中のどこに居ても虫に刺される。③ 何度もバルサンで全室処理したけど症状が治まらない。④ 身体から白い虫がたくさん出てくる。⑤ 靴下の中やセーターの中も白い虫がたくさん付いている。⑥ 丁寧に掃除しても身体が痒くなる。⑦ 浴室の天井に白い卵があって虫が出てくる。⑧ リビングの照明を見ると虫がうごめいているように見える。⑨ 床にも虫が食べたような跡がある。⑩ 私は口呼吸だから虫が身体に入って、それが血液に入って死んじゃうかも…など…読者の皆様はどのような印象をお持ちになられましたか? 家財道具の完全処分と入室者への完全防備の強要、そして、上記の言動とおそらく誰もが「やはり病んでいる」としか判断されないのではないでしょうか? でも、そんなことはなかったのです。お婆さんは至って健全だったのです。その理由は後述します。これら不可解な自己申告に対する回答に言葉を選びながら、何度も予習したカウンセリングは全く歯が立たず、とにかく本題の害虫棲息調査を実施してみましょうと相成りました…。 ◎謎の液体 床面は一見すると綺麗に見えるもののよく目を凝らしてみると何か液体をこぼした様な染みが至る所にありました。何をしたのか尋ねてみると、寝室のクローゼットにその正体が隠されていました。クローゼットの扉は隙間をガムテープで封印されており容易には開けられない状態になっていました。ものものしい雰囲気の中でテープを撤去して覗いてみると「ダニアースレッド ノンスモーク霧タイプ(マンション・アパート用)」ならびに「ダニアースレッド 水タイプ」の使用済み容器が大量に。いずれも通常6?8畳に1個の製品が各10個以上、計20個を超える残骸がビニル袋に詰められて保管されていたのです。今日までに何回に分けて処理されたかは定かではありませんでしたが、尋常でない床面のベタつき具合から、規定量を大きく超えて使用されていたものと推察されました。そのため、これら殺虫剤の誤った使用方法による健康被害を真っ先に疑いました。 合成ピレスロイド系化合物に特徴的な眼粘膜や鼻、のどや皮膚に対する違和感や刺激、使用後の体調変化について尋ねてみました。結果は特に変化なし。何事も無く無事に過ごされていたのです。お婆さんは大変な綺麗好きで几帳面らしく、日常的な掃除は徹底的に行っていたとのこと。前述の空間処理剤の使用後は、都度、清掃業者にハウスクリーニングを依頼し、清掃していたというのです。ただし、清掃業者からは毎回「お客様の清掃プランではこのベタつきは取れません」と通告されていたそうです…。理由はともあれ、これでベタつきの正体は判明しました。 ◎刺す虫の謎 部屋を清潔に保っていても発生する害虫。それも刺す虫とはいったい何なのか? 様々な憶測が飛び交う中で候補に挙がったのがトコジラミ(ナンキンムシ)でした。日中は室内のごくわずかな隙間に潜んでおり、深夜になると活動する吸血性昆虫です。この虫なら、家庭用殺虫剤の多くに採用されている合成ピレスロイド系化合物にも抵抗性が発達しており、日中であれば見つけられないことも充分に考えられます。そこで、トコジラミの棲息の目安となる「血けっ糞ぷん」を探してみることにしました。寝室の角やクローゼットのドア金具の隙間、サッシの周りやカーテンレール、幅木の隙間などトコジラミ特有の生態から考えられる虫の好みそうな場所をくまなく調査してみました。また、かろうじて残されていたベッドのフレームとマットレスについても隅々まで探してみました。その結果、寝室だけでなくどの部屋にもトコジラミの棲息を感じさせる痕跡も虫も、何一つ見つからなかったのです。家財道具等が撤去された今となっては以前の状態を知る由もありませんが、室内は風通しも良く、日当りも抜群で美しく、トコジラミだけでなくツメダニなども繁殖するような環境ではありませんでした。 ◎驚愕の事実 あまりに綺麗にされていた…というよりは、現状はすでに何も無いため調査は難航しました。お婆さんの言っていた、虫が発生した当時のままであれば何らかの糸口を見つけられたはずなのですが、11 agreeable No.25 January 2013/1