ブックタイトルagreeable 第25号(平成25年1月号)

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概要

agreeable 第25号(平成25年1月号)

12 3シロアリは面白い昆虫 シロアリは、重要な木材害虫ですが、社会生活をする面白い昆虫としても、よく知られています。シロアリの社会生活については、吉村先生が本紙22号に解説されていますので、今回はもう少し詳しく触れることにします。社会生活 昆虫では、母親と幼虫の間に、(1)母親は幼虫の食べ物かその近くに卵を生み、幼虫は親とは無関係に単独で成長(前社会性)、(2)母親は幼虫に食物を与えるが、幼虫が羽化する前に離れる(亜社会性)、(3)親世代と子世代が同居して弟妹の成育に協力する(真社会性)の関係があります。シロアリは、ミツバチやアリ類とともに高度に発達した真社会性の昆虫です。 シロアリは、木材中に家族集団をつくるキゴキブリの仲間から分化したと考えられ、社会生活をするゴキブリということができます。キゴキブリと下等なシロアリは、消化管中に共生する原生動物の助けで木材中のセルロースを利用できることと、脱皮の度に後腸からこの原生動物が失われること、および卵を通してこれが子孫に伝わらないことから、原生動物の受渡しの場として特殊な排泄物を舐めあう集団生活が発達したと考えられています。また、家族による集団生活は、化学物質の存在と循環によって調節と統一が保たれ、シロアリ全体からみるとコロニーの安定性と恒常性を高める方向へ進化していると考えられています。シロアリの出現 シロアリは、石炭紀後期から二畳紀の初期にゴキブリから分化し、巨竜が活躍した中生代にはすでに現在の主要な分類群は出現していたと考えられ、従って、シロアリには少なくとも1億年以上の進化時間を含んでいます。このことから、シロアリという名前は同じでも、進化歴史は分類群ごとに大きく異なることから、生活様式や生理学的研究などでは、つねに比較と系統的位置づけの配慮が必要になります。 シロアリの研究でよく出てくるダイコクシロアリ(レイビシロアリ科)とオオシロアリ(オオシロアリ科)は原始的で、ヤマトシロアリとイエシロアリ(ミゾガシラシロアリ科)は中間的、タカサゴシロアリ、コウグンシロアリ、タイワンシロアリなどは高等なシロアリ科に所属します。シロアリの階級 シロアリの加害部を暴くと、白い沢山の職蟻と、褐色で大きな頭部を持つ少数の兵蟻が出てきます。また時期によっては胸に翅芽のある白いニンフやそれから成虫になった有翅虫、また巣の一部には小さな幼虫や卵を産む女王と王のいる場所もあります。これらは、形と役割分担が異なることから、社会性昆虫では階級(カースト)と呼んでいます。 職蟻階級は、家族集団の90─95%を占め、餌の採取・運搬、巣の構築と修理、清掃、幼虫や兵蟻への給餌などの役割があります。 兵蟻階級は、若い集団で割合が高く、発達した集団では2から5%で安定してきます。 生殖階級は、女王と王、及びこれらを補充する副生殖虫が含まれ、産卵に専念する階級です。 階級の分化は、レイビシロアリ科のような原始的なシロアリでは、ゴキブリのような卵からニンフを経て成虫になる不完全変態を行い、その途中の発育段階から兵蟻が分化し、また集団の状況によって副生殖虫も分化します。幼虫からニンフの間に職蟻としての働きをする最も数の多い段階がありますが、通常の脱皮では形が全く変わらない静止脱皮をくりかえし、また他の階級になる能力をもつことから、真の職蟻から区別して擬職蟻と呼ばれています。ニンフから擬職蟻に退行脱皮を行うのも特徴です。 ヤマトシロアリ、イエシロアアリなどでは、第3齢からニンフ・成虫系列と職蟻・兵蟻系列が分化した2系列で発育し、静止脱皮や退行脱皮は見られなくなります。九州大学名誉教授 森本 桂シロアリの知識第五回シロアリと階級agreeable No.25 January 2013/1 2