ブックタイトルagreeable 第32号(平成26年10月号)

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概要

agreeable 第32号(平成26年10月号)

高知工科大学 堀澤 栄菌類の話第4回木材を劣化させる菌類 木材は適切に使えば100年以上も持ちこたえる耐久性の高い材料です。しかし生物が分解できる天然材料でもあります。生物による劣化の主な原因は、しろありなどの生物による食害と微生物による分解といえます。木材を分解するのは、主に担子菌類(キノコの仲間)である木材腐朽菌です。木材腐朽菌は、木材の化学成分を分解する酵素を分泌し、その分解物を栄養として生きています。酵素によって分解された木材は、比較的短時間に強度が低下してしまうことがあります。木材の化学成分 木材すなわち樹木の体は、樹木という植物の細胞が集まってできています。樹木の幹では、樹皮のすぐ下側の薄い層だけが生きた細胞で、幹の中心の細胞は死んでいます。植物の細胞は細胞壁を持っていて(動物細胞は細胞壁なし)細胞本体はその壁の中で保護されています。細胞が死んで細胞本体がなくなっても細胞壁は残ります。したがって、木材は樹木細胞壁の集まりとも言えます。植物細胞壁は主に、セルロース、リグニン、ヘミセルロースと呼ばれる成分で構成されています。 セルロースは、グルコース(ブドウ糖)を構成単位として鎖状に1000個以上つながった高分子です(図1)。さらにセルロース分子が束になって結晶化するとかなり強い分子になります。人間はセルロースを食べても体内で分解することはありません。木材腐朽菌はセルラーゼという酵素によってセルロースを分解します。リグニンは大変複雑な構造をもった高分子です。図2左の分子を構成単位として、網目状3次元的にランダムに重合します。その結果分子は不定形になります。ヘミセルロースは糖が重合した高分子ですが、セルロースは構成する糖が1種類であるのに対し、多数の糖が重合してできています。またセルロースは1本の鎖状分子であるのに対し、ヘミセルロースは枝分かれした鎖です。白色腐朽菌 木材腐朽菌の中の白色腐朽菌は、木材の主要成分すべてを分解する酵素を生産します。中でもリグニンを分解する酵素を生産することが大きな特徴です。主にリグニンを分解された場合、木材はセルロースの色である白色を呈します。それで、このような木材腐朽菌を白色腐朽菌と呼びます。白色腐朽菌に攻撃された木材はセルロースが残図1 グルコースおよびセルロースの化学構造図2 リグニンの構成単位と基本的な重合様式左:リグニンの構成単位、右:重合様式の1つであるβ -O-4結合を示すagreeable No.32 October 2014/10 2