ブックタイトルagreeable 第35号(平成27年7月号)

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概要

agreeable 第35号(平成27年7月号)

以前、本誌で「亜細亜の民族住居」として第1号(2007年1月号)から第6号(2008年4月)まで連載させていただきました。今回はその続編ということになります。しかし今回はアジアの民族住居を事例的に紹介していくものではありません。本連載では、「イエって何なのだろう」という、哲学的ともいえる根源的問題について紐解いていこう、と思います。この20年あまり、この「イエって何か」の究明に時間を費やしました。前記したアジアの少数民族を観てきたのもこれを解明するためでした。結論から言えば、「イエは、民族や地域の固有観念を具現したもの」と言うことになろうか、と思います。さらに「その観念を具現化したイエにより居住者は、生活を規制されている」とも言えます。観念というのは、言い換えれば、宇宙観・世界観と言うものになるでしょう。宗教観や男女観、死生観と言った、民族や地域で異なるものが、イエに反映され、具現されています。日本では住文化という研究分野があります。それは「住居に残る文化」を現象として、指摘・解説したものですが、その要因について研究する人はほとんどいません。つまり、イエにはこんな生活をする文化、こういう風に建てる文化がある、という指摘はあっても、それが何故かを探っていません。たとえば台所・調理空間についてみれば、かつて日本の住居には、沖縄、九州から山口くらいまでの地域に存在するように台所を分棟にする住居があり、それから東・北の地域は住宅内に炉や竈が作られる、といったことがあります。しかしその理由は、暑いところは、住居内で火を使うと暑いから、という気候の問題で語られています。しかし、九州北部や本州西側がそんなにその他の地域と気候差があるとは考えられません。恐れずに言うと、理由を探っていない安易な解決である、と言っても過言ではありません。実はそこには、カミの存在があります。イエにいると考えられる火の神は実は二種類あります。一つはヒヌカンなどと言われる神で、「住宅内で居住者の日常を見張り、上位の神に報告する神」です。もう一つの神はイエの守り神として、居住者を見守る神です。その二つの神のどちらを信じるか、によって住居が変わります。前者を信じる場合、あまり見張られたくないので別の部屋や建物にします。一方後者の場合はいろりとして住宅内部にまつられます。それによって、神との関係もことなります。いろりには居住者の着座が決められ、その方向・方位に意味が与えられます。そのことから、いろりの着座は、日本では地域に関係なく全く同じです。さらに、このような観念や形態は、海外から伝播したとは考えにくいのですが、いろりの周りの着座は、広くアジアで共通しています。竈・いろり以外にも、このような文化は多く残り、日本の住宅を作り上げてきました。話は飛びますが、日本の住宅はnLDKという日本になかった住宅形式を取り入れました。このnLDK 型の住宅は生活しにくい、と言う批判・議論が、1970年代から出てきました。80年代にはnLDK型からの脱却を目指す住宅大阪市立大学上田博之イエって何?人類学的住居のみかた ①agreeable No.35 July 2015/7 8