ブックタイトルagreeable 第35号(平成27年7月号)

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概要

agreeable 第35号(平成27年7月号)

とにかく早期発見と早期処置気候が温暖なわが国では、木造建築物は虫害や腐朽などの生物劣化を受けやすい。とりわけ建造されてからの経過年数が長い、建物規模が大きい、維持管理の手法が確立していないなどの理由で、被害が甚大化しやすい。建築物におけるシロアリ対策としては、化学薬剤による予防・駆除処理が主流をしめていましたが、昨今、環境や人体への影響への懸念、薬剤の有効持続期間やコストなどに関する技術的な課題を背景として、新しい維持管理体制の構築が模索されつつあります。建築物の維持管理において最も重要なポイントは、シロアリ食害の早期発見と早期処置であり、それによってできるだけ少量の薬剤で効率的な処理が可能となります。従来のシロアリ食害の探知は、熟練の技術者による目視、触診、打診といった方法が中心でしたが、食害がかなり進行したものでないと探知が困難であること、壁内部での食害の探知が目視で困難であること、そして技術者の熟練度によって探知の精度が異なることなどの問題があげられます。そこで、シロアリ食害の早期発見と高い精度での探知を目的として、近年、様々な計測機器を用いたシロアリの非破壊探知技術に関する研究が行われ、実用化される技術も見られるようになりました。ここでいう「非破壊」とは「素材や製品を破壊しない」ことであり、シロアリ食害の探知においては、木材や壁面などを破壊することなく、シロアリの生息の有無、その生息位置、食害程度・範囲・分布状態などを調べることになります。地震災害に見るシロアリ探知の重要性一方、昨今頻発傾向にある大地震の際に、本来なら構造上安定している建築物でもシロアリや腐朽の被害によって簡単に倒壊することが解明されつつあり、徐々に生物劣化に対する認識が強くなりつつあります。2007年3月25日に発生した能登半島地震での住宅被害と生物劣化の報告1)を受け、筆者も2007年7月16日に発生した新潟県中越沖地震で、生物劣化に着目した調査依頼を受けましたので、実際に現地での調査を行ってきました2)。通常、シロアリ被害だけで住宅が倒壊することはないと考えていましたが、やはり地震のようなものすごい外力が加わると、シロアリ被害家屋は一気に倒壊することを目の当たりにしました(写真1)。具体的には約100棟の全壊家屋を中心に目視による調査を行った結果、全ての家屋で腐朽が、7割の家屋でヤマトシロアリによる被害が観察されたため、これらの被害により大きく耐力が低下したと推察されました。腐朽は土台や柱の下部に被害が集中していましたが、ヤマトシロアリの被害は床下の部材から柱へ進行し、梁や桁などの部材にまで達しているものも見られました(写真2)。特に、ほぞ差しの接合部がヤマトシロアリによって食害を受けた場合は、ほぞ部分が全く抵抗できずに引き抜けてしまい、部材が外れて建物崩壊をまねくケースも見られました(写真3)。通常、柱などの部材は壁に覆われているため、シロアリの被害を発見することが難しく、半壊や一部損壊といった被害家屋でも、見えない壁内でシロアリの被害が進行している可能性も考えられます。木造建築物においてはシロアリ食害の有無を判断するとともに、食害が確認された場合の木材の強度低下を評価する必要もあります。したがって、計測機器などを用いてシロアリ食害(特に食害の程度)を非破壊京都大学大学院農学研究科簗瀬佳之シロアリ食害の非破壊探知技術の必要性最新シロアリ探知技術 第1回写真1 全倒壊家屋とシロアリ被害写真2 ヤマトシロアリによる梁や桁材の被害agreeable No.35 July 2015/7 12