ブックタイトルagreeable 第35号(平成27年7月号)

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概要

agreeable 第35号(平成27年7月号)

私自身日々の業務の中で遭遇する木材に脱出孔を作る虫だけでもかなりの昆虫を確認しました。ヒラタキクイムシからクマバチなど、脱出孔の大きさである程度の種の予測はつくのですが、脱出孔の大きさは多岐にわたり直径1㎜程度?15㎜程度まで幅広く存在します。あくまで脱出孔は予測でしかなく個体の生育状態で、これだという確信は実際に目視で確認する必要があります。クロタマムシの脱出孔は成虫の形状によりやや楕円形を作るケースが多く、楕円形であればタマムシ類である可能性が高まります。今回の研修でもやはり、やや楕円形の脱出孔が多く見受けられました。クロタマムシは松材に産卵するケースが多く、今回被害を受けた樹材もクロマツであったことから判別には重要な要素だと思います。また意外に見過ごされているクロタマムシの被害は幼虫期間が長く、約5?6年と過ごす間に加害は広く深く進行することから、産卵場所に選ばれた部材は長期間の食害を受ける為、一般に考えられているよりもはるかに木材内部の加害が激しく、シロアリとは違った加害も知ることができ、改めて今後のクロタマムシ被害の実態解明が必要だと思われます。また、駆除においてはクロタマムシ食害内部に消化されなかったセルロース糞をかなりの圧力で詰めている為、薬剤注入をした場合、水分(薬剤)を吸った虫糞が内部で膨張し、建材の割れを起こすケースがあると説明があり、改めて慎重な駆除が必要であると感じました。今回の研修では神社建築でしたので、被害状況は比較的目視できやすい環境で行われた研修でしたが、一般住宅でも人目に触れない2階の小屋裏でも十分に考えられる複合被害のケースになると思われ、建築様式が様々変化を遂げる中、意外に見落とされそうなクロタマムシの被害も今後は増えてくると考えられます。また今回は複合被害ということもありますが、イエシロアリは床下からの侵入ではなくトタン屋根の上に積もった落ち葉や枯れ枝などの堆積物が溜まり胴差から侵入し、雨水や結露などで水分補給をして営巣したものと思われます。私自身も過去に屋根の堆積物に巣を構築した珍しい被害を経験しており、その時の状況は鉄筋コンクリート造のマンション5階の一部屋の被害調査時に遭遇しました。それは陸屋根堆積物に巣を構築し、被害進行したケースでした。その時もやはり同じように建物下部よりも上部の被害が著しく、“シロアリの被害は下から来る”と言う固定観念で初期調査を行うと大きな見落としに繋がりやすく、調査時には常に巣の想定を柔軟に想像することが必要であるのもこの研修を通じて改めて実感しました。またクロタマムシとの複合被害は意外に知られていませんが、実際には見落とされている被害は多いのでないかと推測されます。また本物件には、写真の様に砲弾が貫通したような痕も多数あり、ゲラ類やキツツキなどの鳥類からも被害を受けているとのことで木材害虫だけでなく様々な被害に悩んでいらっしゃるということでした。この様な貴重な研修場所をご提供して頂いた神社の総代様をはじめ地元の関係者の方々及び講議・指導を頂きました「クロタマムシ・ラボ」の三好様に改めて感謝御礼申し上げます。クロタマムシ脱出孔ほぞ穴接合部分を喰害するイエシロアリ被害クロタマムシ脱出孔イエシロアリの蟻道19 agreeable No.35 July 2015/7