ブックタイトルagreeable 第35号(平成27年7月号)

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概要

agreeable 第35号(平成27年7月号)

の糊状のコロニーは白金耳で画線培養します(図4a)。培地上でジグザグを描き、途中で火炎滅菌して清浄なループでさらに画線することで、隣のコロニーを接しないシングルコロニーを得ることができます。シングルコロニーの作出は純粋培養の確認に必要です。カビで胞子を形成している場合は、鉤を用いて胞子に触れ、新たな培地に軽く触れるだけ植菌できます(図4b)。菌糸のコロニーの場合は寒天培地ごと切り取り、新たな培地に乗せます(図4c)。菌を拾う作業は無菌環境下が望ましいですが、空気の流れの少ない正常な場所で、素早く行うことで無菌に準じた作業となります。分離した菌は何度か植え替えを通じて、他の菌が混ざっていない純粋培養であることを確認し、以降の試験などに用います。腐朽材からの菌分離腐朽材から菌を分離するときは、エタノールなどで清拭した切削道具で腐朽材から小片を切り出し、寒天培地に載せて培養します。材片切削の際に出てくるノコ屑を培養するのもよい手です。細菌や酵母あるいは胞子を形成するカビを分離したい場合は、それほど困難はありませんが、木材腐朽菌など成長が遅い糸状菌類の分離は少々技術が必要です。腐朽材の状態によっては他の成長の速い菌に負けて増殖できず、分離できないこともあります。低温で培養したり、培地に雑菌を抑える薬剤を加えるなどの工夫をすることもあります。状態のよい子実体(きのこ)が得られた場合は、子実体の組織を切り取って培養すると、菌糸体を形成します。組織が新鮮で虫などの侵入がない場合に限られますが、菌の最大の特徴である子実体の情報をもった菌体が得られます。組織の切り出しは火炎滅菌したメスなどで行います。1枚の寒天培地に組織1個では効率が悪いので、3個?7個くらいを同時に切り出して培養します(図5)。他に、胞子を形成する部分を寒天培地のフタに貼付け、落下してくる胞子を培養する多胞子分離法があります(図6)。以上のように、環境中から菌類を分離する方法の一部を紹介しました。他にも様々な方法がありますが、それらを効果的に選択、組合わせて菌分離に挑みます。いずれにせよ成功率はそれほど高くないので、ダメ元の精神で気長に取り組んだ方がよいでしょう。それで「培養を介する菌の研究は、時間と労力がかかる」と言われるのです。図3 微生物植菌に用いる白金耳および白金鉤。a;白金耳(ループ)、b;柄と縫い針、c;白金鉤図4 微生物の拾い方。a;細菌や酵母の場合は画線培養、b;胞子の場合は刺すようにして植菌、c:菌糸の場合は菌糸片を寒天培地ごと切り取る図5 菌組織培養時の配置の例。左;3個の場合、右;7個の場合図6 多胞子分離法。胞子を形成する組織をシャーレのフタに寒天片で貼付け、落下してくる胞子を培養してコロニーを得る3 agreeable No.35 July 2015/7