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しろありNo.151

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概要

しろありNo.151

( )しろあり 年 月は じ め にナミダタケの防除について初めて問い合わせを受けたのは,平成 年 月岩手県の工務店からであった。土間床にマツの床板を貼る改修工事をした土蔵が水害を受け,数年後白い菌糸が床板と壁に広がり,木部が腐っているとの内容であった(写真 , )。この物件は工務店による被害材の交換と市販の木材保存剤の塗布による処理で出番は無かったが,身近で起こったナミダタケ被害にとまどった。この夏に度目のナミダタケ被害に遭遇し,対応することになったので具体的な調査を実施した。ここにその内容を報告する。ナミダタケについてナミダタケによる家屋の腐朽被害は,昭和 年頃から問題視され,昭和 年頃から数年間北海道で新築の木造住宅で発生し,大きな社会問題となった。この原因は未熟な断熱工法と不充分な防腐処理だった。現在北海道では築後間もないナミダタケ被害は,ほぼ消滅したと言われる。ただし寒冷地を中心にした散発的な発生は報告されている。ナミダタケは 家につく菌 という意味で真正家菌と呼ばれ,屋外で見つけることが難しい。この菌の特徴は,木材の主成分であるセルロースを主に分解し,腐朽材は褐色になるので褐色腐朽菌の仲間である。ナミダタケの判定は子実体(キノコ)の観察により行なう。子実体が採取出来ない場合には,菌糸を実験室で培養して判定する。空気中の湿度,木材含水率とナミダタケの腐朽力の関係は,湿度が %以上,木材含水率 %程度であり,これ以上の条件で菌糸が旺盛に生長し腐朽が進む。ナミダタケの生長に適する温度は, であり,特に で最大の生長速度を示すが以下では生長せず,更に 以下になると,一部は死滅する。また逆に温度が高過ぎても生長が鈍り, 以上になると,死滅する菌株がある。ナミダタケの生育はアルカリ性の条件で強く抑えられるが,木材は酸性( 前後)のため,ナミダタケの生長にとって都合が良い。木材を腐朽せしめる力について言えば,ナミダタケは建築害菌の中でも,極めて大きな腐朽力を持っている。そして,ナミダタケは広葉樹より針研究発表会ナミダタケ被害対応事例斉 藤 恵 一写真 床板から柱へ伸びる菌糸写真 床下土壌面にも菌糸が生長している