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しろありNo.151

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概要

しろありNo.151

アリの成長速度も速いことから,条件さえ揃えば加速度的に個体数が増加する。また,優れた移住性を有し,容易に巣を分割して分散する能力を持つ。女王アリが結婚飛行しないため自然状態での長距離分散は困難であるが,駐車中の自動車内に侵入し営巣した例が数例観察されていることから,交通機関等を利用して飛び火的に分布を拡大する可能性も高い。また,コンテナ,建築材,園芸資材,収集ゴミ,そして古タイヤ等の廃品などの移動も,本種の分布拡大を助けてしまう可能性がある。さらには,土地の造成等に伴う土砂の移動,造園のための土付きの樹木の移動などは,一度に大量の個体が運ばれる可能性の高い事例として注意が必要であると考えられる。防 除 法アルゼンチンアリはもともと殺虫剤には弱いアリなので,市販されている既存の家庭用殺虫剤を使用することで,目に見えているアリだけは簡単に殺すことができる。しかしながら,本種の個体数は膨大で,行列など目に見えているアリに対し,その数千倍 数万倍の数のアリが巣内に潜んでいる。目に見えているアリを殺したとしても,巣内のアリが次から次へと現れてまったく際限がないのである。つまり,アルゼンチンアリの駆除の最大のポイントは 巣の根絶 にあると言える。現在市販されているアリ用殺虫剤には,液剤,粉剤,エアゾール剤,ベイト剤といった種類があるが,アルゼンチンアリの巣の根絶に最も有効なものは液剤,中でも フィプロニル を有効成分とする液剤(以降,アルゼンチンアリ専用液剤)であろう(写真 )。ベイト剤にも巣の駆除を謳った商品はあるが,前述したように本種は個体数が膨大なため,ベイト剤を数個設置した程度ではまったく対処し切れない。アルゼンチンアリ専用液剤は,アリが巣内でお互いの体を舐め合ったり触れ合ったりする習性(グルーミング)に着目し開発された殺虫剤である。有効成分フィプロニルはフェニルピラゾール系の殺虫成分で,アリを含む昆虫に対して遅効的に作用するという特徴を持つ。アルゼンチンアリ専用液剤に触れたアリはその場では死なずに,有効成分を体に付着させたまま巣に戻る。そして巣内でグルーミングが行なわれることによって,薬剤に触れたアリから他のアリに有効成分の効果が連鎖的に伝播し,最終的に巣全体に行き渡ることによって巣が根絶される仕組みである。使用方法は,アルゼンチンアリ専用液剤を本種の行列や植木鉢の下などにできた巣に直接散布する,あるいは,行列が出入りしている壁の割れ目などに流し込む。巣の所在がわからない場合にも,行列に処理することで巣への効果を発揮できることも,大きな特徴のひとつである。アルゼンチンアリ専用液剤を被害家屋に施用した実地試験では,長期に渡る明らかな個体数の減少が認められた。最も効果が顕著に現れた実施例としては, 回の処理でその後 年間以上,家屋内への侵入個体は皆無となっており,非常に高い有効性が実証されている。ま と めアルゼンチンアリは不快害虫としてだけでなく,農業害虫として,もしくは環境的ダメージを及ぼす可能性のある重要害虫として,世界的に大きな問題となっている。本種は日本国内の環境条件にも適応して完全に定着し,年々その生息域を拡大している。年には,その勢力は関東地方にまで拡がり,いよいよ全国規模の問題となりつつある。アルゼンチンアリはもともと殺虫剤には弱いアリなので,市販されている既存の家庭用殺虫剤でも,目に見えているアリを殺すことは容易であるが,個体数が膨大なため巣を根絶しない限り,駆除効果は持続しない。フィプロニルを有効成分とするアルゼンチンアリ専用液剤(商品名 アルゼンチンアリ巣( )写真 アルゼンチンアリ専用液剤(商品名 アルゼンチンアリ巣ごと退治液剤,有効成分 フィプロニル)