ブックタイトルしろありNo.151

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しろありNo.151

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概要

しろありNo.151

( )しろあり 年 月度の高い人工乾燥材が要求されるようになり,以上の温度をかける高温乾燥法が採用されるようになった。この場合,上記の蒸煮処理とは異なって,温度が若干低いが,蒸煮と同様の材成分の変質が起こることが危惧される。また,耐蟻牲は抽出成分に依存していることも知られている。乾燥過程でそれらの揮散,変質,分解,材内移動などが起こり,その結果として耐蟻牲が変化することも考えられる。そこで,筆者は,カラマツとスギの人工乾燥材について,耐蟻牲変化と材成分との関係がどのようなものであるか検討を行い,若干の結果を得た。ここでは,それらの結果を中心に報告したい。高温乾燥の定義人工乾燥という言葉は,天然乾燥に対する言葉である。天然乾燥は,常温下に製材を比較的長期間,桟積みして風通しを良く雨に当たらないように保管し,含水率を低減させる方法である。これに対し,人工乾燥は,常温以上の熱をかけ,比較的短時間で木材中の水分を除去することを指す。具体的な方法として,蒸気式,除湿式,蒸気・高周波複合式,高周波過熱・減圧式,蒸煮・減圧式,過熱蒸気式,液相式,燻煙式などさまざまな方法がある。これら人工乾燥の方式にかかわりなく, 以上の加熱過程を含む乾燥方法を高温乾燥という。カラマツ心材における高温乾燥の影響 )供試材および乾燥方法長野県内で伐採した 年生のカラマツ心材をに鋸断し,表 に示すスケジュールで蒸気式による高温乾燥を行って,約 %の含水率に調整した角材を試料とした。この試料の長手方向の中央部分から厚さ の木口切片を切り出し,ここから 個の耐蟻性評価用の試験片を調製した。試験片の大きさは, (木報 文人工乾燥による木材の耐蟻性変化土 居 修 一は じ め に戦後,北海道に大量に植栽されたカラマツの間伐材は,旋回木理による狂い易さや大量に分泌されるヤニなどのために,住宅などの材料としては使いにくく,坑木として利用されるのが代表的な用途であった。一部では,耐久性が大きいという理由から土台にも使われていたが,高度な利活用の推進が要求されるようになり, 年 年頃さまざまな技術開発が行われた。住宅構造材や内装材など付加価値の高い用途を開発するため,人工乾燥による脱脂処理,内部応力の除去,あるいは集成材化,ボード化などの技術開発が旺盛に展開され,それらの成果が結実して,現在では集成材などとして大量に使われるようになっている。これらの技術開発の後, 年 年にかけて北海道で 蒸煮処理技術を用いた新しい木質材料の開発という中小企業庁のプロジェクト研究が行われた )。これは,オートクレーブを用いてカラマツ板材を蒸煮すると,適度に着色でき,薬剤などの注入性を改善でき,調湿能を向上させうるという利点を生かして,付加価値の高い内装材や家具部材を作ることを目的としていた。その結果, で数十分間蒸煮して落ち着いた色調の内装材を作る技術が確立し,企業による実生産と製品の家具や建物への試用が始まった。ところが,直後にこの蒸煮材が選択的にシロアリの食害を受けることが明らかになった。そして,その原因として,蒸煮によって摂食促進物質ができることと含有されていた抗蟻性物質の変質が指摘された。以上のことは,文献 )ですでに報告した。この事象は蒸煮処理が耐蟻牲低下につながった事例であったが,現在では,これを逆手にとってベイトシステムの餌として積極的に利用されるようになっている。一方,建築基準法の改正,住宅の品質確保に関する法律(平成 年 月施行)などの影響で,寸法精