ブックタイトルしろありNo.152

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しろありNo.152

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概要

しろありNo.152

( )しろあり年月はじめにタイワンシロアリは東南アジアから東アジアの亜熱帯に分布するキノコシロアリ亜科の種である。琉球列島においては,八重山諸島とともに,そこから離れた沖縄島の首里(那覇市)にも分布することが知られている)。シロアリは流木や,おそらく有翅虫の飛翔によっても海峡を越えて定着する場合がある。ただし,タイワンシロアリのように土壌中に営巣する種に関しては流木による移住は知られていない。また,タイワンシロアリの有翅虫の飛翔距離は程度であり),沖縄島の分布を流木や有翅虫の飛翔で説明することは難しい。その一方で,八重山諸島と沖縄島の中間に位置する宮古諸島に分布するかどうかはよくわかっていないが,もし宮古諸島にも分布していれば,琉球列島が陸続きだった頃に沖縄島までやって来た可能性も考えられる。タイワンシロアリの地中巣から生えるシロアリタケ(キシメジ科のキノコ,写真)が高級食材として広く珍重されていることから,シロアリタケを得るために人の手によって沖縄島に運ばれたのではないかと考える研究者もいる。本稿では,琉球列島におけるタイワンシロアリの分布状況と,沖縄島首里のタイワンシロアリの起源について,われわれの最近の研究)を紹介する。方法八重山諸島と宮古諸島の主要な島において,航空写真を参考にしながら森林域を網羅的に調査した。タイワンシロアリの分布は落葉や落枝を採餌している個体の有無により判断した。安田ら)は沖縄島内を詳細に調査し,首里だけからタイワンシロアリを発見している。そこで,首里周辺の詳細な分布状況を明らかにするために, 以上の森林域を対象として網羅的に調査を行った。また, )によって決定された台湾島,西表島,石垣島,沖縄島の個体のミトコンドリア遺伝子( )の配列とその置換速度)から,それぞれの島のタイワンシロアリが他から分断された年代を推定した。結果八重山諸島の多くの島ではタイワンシロアリの分布が確認されたが,宮古諸島では確認されなかった(図)。沖縄島の首里周辺では,合計箇所の森林域を調査し,そのうちの箇所からタイワンシロアリを発見した。タイワンシロアリは首里を含む直径の円内に集中しており,この円内では箇所の森林域のうち箇所に分布していた(図)。遺伝子配列の解析からは,台湾島と他の島のタイワンシロアリの分断は今から約万年前に起こったと推定されたが,この推定値は大陸中国,台湾島,琉球列島が陸続きだったとされる年代)とよく一致している,同様に,西表島,石垣島と沖縄島のタイワンシロアリの分断は今から約万年から現在までの間に起こったことが示された。ただし,この年代には宮古諸島と沖縄島はすでに海峡で分断されていたらしい)。研究トピックス琉球列島におけるタイワンシロアリの隔離分布について山田明徳写真首里城公園でみつけたシロアリタケ。年月日,撮影仲里嘉晃。