ブックタイトルしろありNo.154

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しろありNo.154

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概要

しろありNo.154

( )しろあり年月報文樹木の腐朽とシロアリの関与山本幸一・大村和香子はじめに筆者の一人である山本は, 年に森林総研に入ってからは木材保存研究室で木材の腐朽や耐久性の研究をしてきた。その間,在外研究のチャンスを得て,マレーシア森林研究所,マレーシア理科大やベトナム森林科学研究所で,熱帯木材の耐久性や材質についての研究を行った。とくに,アカシアマンギウムやチークを対象として研究する中で,それらの心材腐朽に伴う空洞化に興味を持った。本報告では,この現象を紹介する。樹木の空洞化には,腐朽菌は勿論だがシロアリなども関与するため,シロアリが専門である大村に共著者となってもらった。木材の観点から話をするため,樹木の全体像をカバーできないことを勘弁願いたい。樹木の一部が腐る木(本章では樹木を木と呼ぶ)は,幹や枝の一部が腐っても平気な顔をして生きているように見え,その姿に平伏する。反面,桜が首の皮一枚で生き,花を咲かせている姿は,怨念を発しているようにも見える(図)。木は,人間からすごいと褒められても, それは,人間とは違う成長の仕方をしているからですよ。大したことはありません。と謙遜するに違いない。その違いを言うと,人間は大人になっても自分の体の中に年輪のような子供時代の痕跡は残さないが,木は年輪としてハッキリと過去の姿を残し,それに一歩一歩細胞を積み重ねることで大きく生長していることになる(図)。木は,体を取り巻く細胞(図の濃い部分)が生きて分裂し新しい細胞を作りさえすれば,内側の細胞(図の薄い部分)は死んでしまっても,生長し続けることができる。一方,人間は,内臓などの内側の細胞も重要な機能を果たしており,その死は人間の死を意味する。実際,木は自分の体の内部が,自分が生きてい図樹幹の腐朽が進んだソメイヨシノ東北農業センターの桜並木図樹木と人間の生長・成長の直感的な違い