ブックタイトルしろありNo.154

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しろありNo.154

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概要

しろありNo.154

う)に変化して心材となる。そこよりも内側は,昨年以前に死んだ箇所でありすべて心材である。辺材が濃色の心材に変化する過程では,心材成分と呼ばれる抗菌性や抗蟻性を有する物質が死ぬ直前の細胞で合成され,それが細胞自体にしみ込み,細胞は死を迎える。心材には辺材に存在しない抗菌性や抗蟻性物質があることは,心材の耐久性が高いことを意味する。木材を扱っている人間には心材は,辺材に比べて腐朽菌やシロアリに強い。と言うことは,普通の知識であろう。しかし,それは生きた立木を伐採して作られた丸太杭や製材品に限っての話である。生きた立木では,心材の方が辺材より腐朽し易い。その理由について,山口氏は, 辺材は水分通導のため水分が多く無酸素状態で腐朽に不適,( )辺材には生きている細胞が多く菌に対する防御反応がある, 枝は樹幹内部に続いており,菌は心材に到達しやすい, 樹幹の中心部は古い細胞であり抗菌性物質の活性が低下していることを考えている)。辺材と心材の大きな違いは,生きた細胞の有無であることから,最大の理由はであると考えられる。なお,心材の腐朽は, 心材腐朽あるいは根株腐朽と言われる。チークやアカシアの心材腐朽チーク( )は,樹種名がブランド化されている代表的な有用樹種である。国際熱帯木材機関の統計からは,日本のチーク製材品の輸入価格はドル立方米であり,同じ熱帯樹種であるラワン類の倍であることが解る)。木材製品では,色調や耐久性の観点から一般的には心材の方が辺材よりも価値を持つ。その代表はチーク材かも知れない。今や天然林チークは少なく,多くは人工林チークであろう。しかし人工林チークは,生立木の心材腐朽が問題の一つとなっている。チークの教科書によると,インド中西部のチーク萌芽林では%が心材腐朽にかかり,根元からの高さまで被害を受けることが示されている)。筆者の一人である山本は,マレーシア理科大学に長期滞在している際, 教授からこの話を聞かされ,チークの樹幹の中心部に心材腐朽に起因した空洞ができている写真を幾つか見せられた(図)。そして, 空洞ができるような急激な木材劣化は腐朽菌だけの力でなく,シロアリも関与している図心材化の模式図左の円盤年輪目まではすでに心材に変化しており,年輪目はこれから心材に変化する年輪で移行材(白線帯)と呼ばれる。最外層の年輪は年である。右の円盤年後には, 年輪目は心材化が完了し,年輪目が移行材となっている。最外層には年輪目が覆い被さっている。図スギの心材心材を囲んで移行材がある。周囲に比べると含水率が低いことから白く際だって見える。図チーク生立木の心材腐朽直径の樹幹の中心に空洞。樹幹の脇からは萌芽が多く発生。これらも心材腐朽菌に冒されると予測される。(写真提供氏)