ブックタイトルしろありNo.154

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しろありNo.154

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概要

しろありNo.154

はずだ等と木材研究者の何人かで話し合っていた。その点については,すでに樹病研究者からアカシアマンギウムの例が報告がされていた)。アカシアマンギウムでもチークと同様に,生立木の心材腐朽が重大な問題であり,半島マレーシアでは,植林対象樹種から外されたと聞いている。その判断の元となったと思われる報告書によると, 年生から年生において,心材腐朽が発生している割合は%であり,空洞化していた割合は%( 年生の場合)であった)。先に引用した報告では),調査した年生のアカシアマンギウム地域本の中で, 地域の本にだけシロアリの被害が見られ,その内本は激しい心材腐朽を伴っていたが,空洞化していたとの記載はない。地域全体での心材腐朽を受けた木は本であったことから,心材腐朽がシロアリ被害に移行した例は,この調査では少ないと言えよう。実際,アカシアマンギウムが集積された土場で,空洞化した丸太の比率は,これまで調査した半島マレーシア,サバ州,サラワク州,ベトナム,フィリピンに限れば),多く見積もっても数パーセント以下であった(図)。筆者らは,木材の伐倒直後に心材腐朽部に生息しているシロアリを見たことはないが,土場において樹幹中心部から蟻道が延びているアカシア丸太を見た(図)。心材腐朽がシロアリにより空洞化する現象は確からしいが,樹齢が年以下の場合であれば,その頻度は東南アジア全体で見れば高くはないであろう。短いサイクルで収穫( )が繰り返される熱帯早生樹であっても,今後は伐採時期を延長して大径材を収穫する施業も必要であると考えられるが,その際には,心材腐朽の進行と空洞化のリスクを押さえておく必要があろう。心材腐朽の空洞化とシロアリ等の関与スギやヒノキの立木の中心部が腐朽して空洞化している原因について,久林らはヤマトシロアリとウスバカミキリの加害によるものであることを示した)。任意に選んだ間伐対象木本のうち本に心材腐朽の被害が見られ, 本中の本にはフラス(虫糞や木屑)が見られ, 本中の本には空洞化が見られた。空洞化する過程には,腐朽部がヤマトシロアリまたはウスバカミキリにより食害されて直接空洞化する場合,および腐朽部がウスバカミキリの食害によりフラスとなりフラスが消失して空洞化する二通りが示された。また,腐朽菌が木材成分を分解する過程で,さまざまな木材分解物や腐朽菌の代謝物が腐朽部に生じる。これらの物質の中には,シロアリを誘引する物もあることが知られている)。腐朽の進行により木材はやわらかくなり強度が低下する。それ以外にも耐久性に寄与する樹木成分が分解したり,腐朽した部分に水分が保持されたりして,総合的にシロアリの食害を促進することも考えられる。木材を製材品として利用する場合は,腐朽はそもそもの欠点であり,その箇所が昆虫によって食害さ図アカシアマンギウムの心材(髄)から延びる蟻道土場に,はい積みされていた丸太の髄から蟻道が延びていた。丸太の中の心材腐朽の箇所にいたシロアリが危機を感じて丸太から抜け出したのかも知れない。図アカシア丸太のはい積みベトナム・ハノイ市内の家具工場材料はアカシアマンギウムが主体で,丸太は小径木が多い。心材が空洞化した丸太の比率は,ベトナムでは極めて低い。人間の頭の上に写った丸太に空洞が見られる。