ブックタイトルしろありNo.154

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しろありNo.154

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概要

しろありNo.154

であり,その前提として,加害昆虫種の正確な調査による把握は不可欠な研究テーマである。一方,アカシア・マンギウムがさまざまな自然環境において生育できる一つの理由は,窒素固定菌である属菌と共生しているからである)。また,菌根菌との共生に関する報告もある。一方,アカシア・マンギウムは属などにより激しい心材腐朽を受けることが知られており),また属による赤色根腐れ病は最大%の枯損被害が報告されている)。さらに,木材そのものも低い耐朽性しか示さない。興味深いことに, およびとアカシア・マンギウムのハイブリッドには心材腐朽は発生しないと言われている。例えば,アカシア・マンギウム林とハイブリッド林における菌類の詳細な調査を行い,両種の腐朽機構を分子レベルで解明することによって,共生力あるいは耐朽性を向上させた形質転換樹木の作出に関する基礎知見を供給できる可能性がある。本研究の目標本報告では,筆者らの研究グループが年度から実施している熱帯大規模植林地におけるシロアリと木材腐朽菌類の野外調査の内容について紹介するが,まだ調査が進行中の課題であることから,結果については一部既発表のもの以外,別の機会に紹介させていただくことにしたい。なお,本調査については, 年度からは日本学術振興会科学研究費補助金による研究助成を受けている。本研究において明らかにしようとする具体的な内容は以下の通りである。熱帯大規模人工林における種々のランドスケープ,すなわち荒廃地,種々の年齢の人工林および天然林(保全二次林)におけるシロアリ類の多様性同じく種々のランドスケープにおける樹木関連病害菌類の多様性主要劣化生物(シロアリ,菌類)に対する植林木材の抵抗性評価得られたデータをもとに,造林地・保全林・生物的回廊(コリドー)などの空間的配置や伐採サイクルと病害虫リスクとの関係,そして植林木の生物劣化抵抗性について総合的な解析を行い,生物学的に見てより適切な大規模植林地の維持・管理方法について提言を行うことが最終的な目標である。本研究の特徴的な点は,シロアリ類や木材腐朽菌類など,これまでいわゆる生物多様性という観点からは殆ど評価されてこなかった害虫菌を調査対象として取り上げ,熱帯大規模人工林の持続的維持・管理方法について新しい観点からの提言を行う点である。調査方法と調査地調査体制本研究への日本人参加者は以下の名である(五十音順)。大村和香子(森林総合研究所)竹松葉子(山口大学農学部)土居修一(筑波大学生命環境科学研究科)服部武文(京都大学生存圏研究所)本田与一(京都大学生存圏研究所)簗瀬佳之(京都大学大学院農学研究科)山下聡(京都大学地球環境学堂)吉村剛(京都大学生存圏研究所)このうち,大村,竹松,簗瀬,吉村がシロアリ担当,土居,服部,本田,山下が木材腐朽菌担当である。海外における野外調査においては,現地の研究者との協力が不可欠である。本研究では,これまでに筆者といろいろな共同研究を行ってきた以下の名の研究者に協力を仰ぎ,実際の調査においても多くの学生や若手研究者に参加していただいた。インドネシア科学院生物材料研究・開発ユニット博士インドネシア・大学森林学部博士マレーシア理科大学生物学部教授また,日本側からのサポーターとして,山口大学から神原広平氏,三巻和晃氏,小矢野久美氏の名,京都大学から池田あんず氏と菱沼卓也氏の名,計名の学生の方に協力していただいた。さらには,青年海外協力隊としてベトナム南部林業試験場に赴任中の川口聖真氏には,調査隊への参加だけでなく,勝手のわからない国での調査に関していろいろな面で本当にお世話になった。( )