ブックタイトルしろありNo.154

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しろありNo.154

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概要

しろありNo.154

( )しろあり年月研究トピックスイエシロアリにおける病原菌の水平伝搬清水進・大谷俊次はじめに昆虫病原性糸状菌は多くの害虫の微生物的防除に用いられている) )。しかし,イエシロアリを含む社会性昆虫では研究室レベルで有効性が示唆されているにも拘わらず野外においてはその効果が低減する。これらの理由としてグルーミングあるいは他の社会性行動(糸状菌分生子の忌避および糸状菌で死亡した個体の埋葬)あるいは免疫物質の関与などが考えられている)。イエシロアリは個体密度が高いことから,病原菌の水平伝搬が高率に起こると考えられるが,ネストメイトのグルーミングによる病原菌の除去などがあり,複雑で不明の点が多い)。天敵糸状菌によるシロアリ類の防除をさらに発展させるためには,コロニー内の病原体の動態を明確にする必要があるが,個体間の水平伝搬の定量的な評価は行われていない。そこで,シロアリ集団内での昆虫病原性糸状菌の水平伝搬について詳細な調査を行った。方法黒きょう病菌( )株の病原性の分生子懸濁液を血球計算盤により作成し,ポテトデキストロース寒天( )培地に接種しコロニー数より( )を算出した。各種濃度の分生子液を職蟻頭に接種し,氷上で頭の消化管を引き抜き(消化管内に取り込まれた分生子を除外するため),その後ホモジナイザーによって摩砕し,% 水溶液に懸濁した。シロアリ摩砕液を倍希釈してクロラムフェニコール加用( ) 培地上で, 日間培養した。培地上に現れたコロニー数から, 頭当たりの体表に付着していた分生子数( 頭)を算出した。残りの頭を穴マイクロプレートで単独飼育した。で日間飼育し,毎日死亡率を測定した。得られた体表付着分生子数と死亡率から,プロビット法により両菌株のイエシロアリへの半数致死量( )と%致死量( )を算出した。イエシロアリ個体間における水平伝搬株とイエシロアリ職蟻を用いて,接種個体から非接種個体への分生子の水平伝播の定量実験を行った。に調整した分生子懸濁液で職蟻を処理し,処理個体と非処理個体をさまざまな比率で混合飼育を行った( , ,および)。接種直後, , , および時間後に,処理個体と非処理個体を頭ずつ取り出し,前述の方法で体表付着分生子数( 頭)を算出した。結果株の病原性イエシロアリ職蟻を単独飼育した場合の半数致死量( 値)( 頭)はであり, %致死量( 値)( 頭)はで,数個数十個の分生子の付着によりシロアリを致死させることが明らかになった(表)。なお,集団飼育した場合にはイエシロアリの抵抗力は約倍増強される)。表株のイエシロアリに対する病原性値( 頭) 値( 頭)イエシロアリ個体間における水平伝搬全頭接種区(図, )において付着分生子数は時間後に約分のに減少した。しかし,菌が体内に侵入する時間後でも, 個以上の分生子が付着しており,数日後に全頭が死亡した。接種個体頭非接種個体頭の区(図, )において,接種個体での付着分生子数の減少と,水