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しろありNo.155

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概要

しろありNo.155

( 8 )図2 タイワンシロアリの菌園図3 菌園の菌毬図4 新しい菌園の構築3. 結果 図1に調査した牧草地の菌園の位置を示した。菌園は地中1メートル,地表2.6mの範囲に9個あった。採集した菌園は図2のようなドーム型をし,もろく壊れやすく,重量は120~1,430g とさまざまであるが,約150g の菌園が多い。菌園の大きさは地形やコロニーの大きさに左右されると思われる。王室の菌園の重量は他の菌園より大きく,図2より平らなドーム型をしていた。いずれの菌園にもオオシロアリタケの菌糸が成育し,比較的新しい巣では直径が2~3㎜で白色の球状の菌毬が見られた(図3)。菌毬は栄養素や酵素を豊富に含みシロアリに摂食されている(図4)8)。西表島,石垣島,小浜島,沖縄本島でタイワンシロアリの巣から発生した子実体から分離した菌糸体の遺伝子解析の結果ではすべてがオオシロアリタケでトガリアリヅカタケは認められなかった。また,取り出した菌園を適当な条件で培養すると菌園から子のう菌類のXylaria 属菌が発生してくる9,10)。この菌は地中の菌園では見られず,タイワンシロアリによって抑制されている。 王室はドーム状(30㎝(横)×20㎝(高さ))の菌園の中にあり土のみで作られ中には王と女王が見られた。王室には多くの小さな穴ありそこから兵蟻,職蟻が出入りし両者の世話をしていた。王室の上部には無数の卵が見られた。途中の巣(図の中央あたり)に若幼虫がかなり見られることから卵から孵った幼虫はここに運ばれ飼育されていると思われた。王室にたどり着いたことと牧草への悪影響を及ぼさないために調査を止めざるをえなかったが,実際にはもっと多くの菌園があるものと思われる。 菌園の分析結果を表1に示した。含水率は約43~50%前後で地域による差はほとんど見られなかった。重量は120g から1,430g とさまざまであるが採集した巣は150~200gが最も多かった。巣の大きさは地形やコロニーの大きさと関連があるのかもしれない。菌園の増築は白っぽい古い巣の上に褐色の排出物(未消化の糞)と土を混合したものを積み重ね図のような古い菌床を覆う。そこに古い巣の菌糸の進入あるいはシロアリが新たに植えつけた菌糸が成長するものと思われる(図3)。シロアリは菌薗の下部を摂食することが知られているが11),図のように上部は新しい菌園で分解が進んでいないために摂食されないのであろう。 pH 値は4.3~4.9であった。一般に人工栽培されているきのこ培地では菌の培養日数が進むにつれpH値が低下することが知られているが,菌床においてもオオシロアリタケの菌糸が成長し分解していると思われる。しかし,オオシロアリタケの培養菌糸は他の菌類(シイタケ,エノキタケ,マイタケ等)の成長より著しく劣ることからpH 値が低下(菌園の分解)するまでにはかなりの時間を要するものと思