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しろありNo.155

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しろありNo.155

?大会講演? 木造住宅の構造部材の蟻害・腐朽が地震による建物被害に及ぼす影響 土  井     正 ( 21 )しろあり No. 155, pp.21―25. 2011年1月1. はじめに 2011(平成23)年1月17日,阪神・淡路大震災から16年を迎えた。10万棟以上の家屋全壊の教訓を踏まえて,2000(平成12)年には1986(昭和61)年のいわゆる新耐震以来の建築基準法の大改正が行われた。さらに住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく住宅性能表示制度,2009(平成21)年には長期優良住宅の普及の促進に関する法律が施行されるなど,木造住宅の耐震性能の強化が行われてきた。合わせて耐久性能の維持向上の重要性が謳われているが,建築工法の変遷に対応した防蟻・防腐施工や維持管理の手法については必ずしも明確にされていない。地震被害,とりわけ木造住宅の被害におよぼした蟻害・腐朽の影響から構造安全性を長期間担保する防蟻・防腐施工,維持管理のあり方について報告する。2. どのような木造住宅が建てられているのか わが国の木造住宅には軸組構法,枠組壁工法,木質プレハブ工法,丸太組工法などがあり,軸組構法は伝統軸組構法と在来軸組構法に分類される。 1950(昭和25)年の建築基準法の制定当時から今日に至るまで,木造に係る規程には?木造? としか記載されていないが,住宅規模においては在来軸組構法が想定されていると考えてよい。 さて,同じ軸組構法でありながら伝統構法と在来構法には,構造思想に大きな差異があることについて,一般にあまり認識されていない。1881(明治24)年の濃尾地震(推定M8.0)は,わが国内陸部で発生した最大の地震であり,全壊家屋14万棟余りの大きな被害を出した。当時の住宅は伝統軸組構法で,地震や台風などの外力には逆らわない変形許容型である。そのため,布基礎などの強固な基礎と土台を緊結するといったものではなく,玉石などの上に直接柱を立てるか,土台を置く構造である。また,軸組みの接合部も継手仕口となっており,釘,金物はできるだけ使わないで,壁には斜めの筋かいではなく,柱と柱の間に水平に貫が通されている。 政府の震災予防調査会は,濃尾地震の被害調査を通じて,木造耐震家屋構造要項を作成し,①基礎構造に注意する,②木材の切り欠きをできるだけ避ける,③木材の接合部には鉄材すなわち金物を用いる,④筋かいなどの斜材を用いて三角形の架構をつくるといった木構造の耐震性に関する提案を行い,外力には抵抗して構造体を変形させないといった今日の在来軸組構法の耐震構造の原型を示し,この考え方が建築基準法に反映されている。 在来軸組では耐震性能の向上のために布基礎などの構築と都市火災による延焼対策としてのモルタル外壁による大壁構造が採用され,床下や壁体の通気性を阻害して構造部材の耐久性に弱点を内包することになった。そのため,建築基準法施行令第22条,第37条および第49条のような措置が求められているのである。          3. 地震毎に違う被害の様態 地震動の大きさや伝わり方は地震の発生メカニズムや途中の地盤構造によって異なる。また,地震動の周波数特性と建物の固有周期よって被害の出る建物構造が違ってくる。 地震動は短い固有周期の低い建物には大きな力を与え,長い周期の高い建物ほどその力は小さくなるが,揺れによる変位が大きくなる。 周期1~2秒のパルス的地震動はキラーパルスと呼ばれ,木造家屋に大きな被害をもたらす。但し,軽量で堅固な木造家屋の固有周期は0.2 ~ 0.3秒程度