ブックタイトルしろありNo.155

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しろありNo.155

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しろありNo.155

( 31 )大切な資源が有効に使える手立てはないものかと思っている。市場に出る松材の中にクロタマムシの幼虫が潜り込んでいるものがあれば,防除しないと建築後3~4年を待たず成虫が脱出することになる。6. ま と め? 再生可能な解体材は利用される予定であったが,新本堂の個々の部材が大きくなったため,仕上がり寸法が寸伸びとなり,使用ができなくなったのでは。? 再利用出来たものは,化粧垂木,欄間,座板下地,屋根角木,小屋内仕切壁の下地板2か所分。? 廃棄材の被害概況 当初,ヤマトシロアリ,シバンムシ,腐朽,クロタマムシの被害順位を予想していましたが,予想に反し全くの逆転で,クロタマムシ,シバンムシ,腐朽,ヤマトシロアリの順位であった。クロタマムシの被害場所と部材名,被害が大きくなった原因が解体によって明らかになった。しかし一番の要因は,寺の敷地が標高200m余の盆地の南面山麓にあり,市街地より約20mの高台にあって,年間を通して正面から強い風雨が吹付け本堂の屋根,床下四方の外壁と全面に雨を受け建物の劣化が進行したものと考えられる。 すべての被害がこの風雨によって進行したことが分かった。シロアリだけに水が必要と思っていたことは間違いであった。クロタマムシでもシバンムシでも雨水がよく集まる場所は被害が大きくなり,ヤマトシロアリよりも被害が広く,深く,大きくなったことが分かった。ヤマトシロアリは松材の雨漏りの部分に被害があった。そこからの被害の広がりは少なく,広葉樹1本10mに集中していた。シバンムシは松丸材の表面1.5㎝前後の深さですべての材に被害があった。腐朽は写真10,11の全体にあり虫害の中に複合被害となっています。虫害の後,腐朽菌が広がった感じです。松の大引,鴨居にクロタマムシの被害が集中していた。? クロタマムシの実態調査で判明したこと。 ① クロタマムシの幼虫は伐採前から松の材中に潜り込んでいる。 ② クロタマムシは産卵のために毎年建物にやってくる。 ③ クロタマムシはヤマトシロアリ以上に水,湿気があれば被害の進行が速くなる。 ④ クロタマムシの予防は切組加工の後,取り敢えず松材全部を現場処理すると,防虫効果が高いのではと思う。 ⑤ クロタマムシの駆除はシロアリとの生態の違いを知ってから施工を行う。 最後になりましたが,調査でお世話になりました,関係者の方には心よりお礼を申し上げます。(西南シロアリ有限会社代表取締役)写真20 寺の山門から見た市街地。前の山を越えた風雨が寺の正面に強く吹き付ける。写真21 新築した本堂(旧本堂とほとんど同じ)風雨対策は今も続いている。