ブックタイトルしろありNo.156

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しろありNo.156

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概要

しろありNo.156

( 12 )好であると見受けられた。王宮型については,その都度補修が行われているとのことであったが,補修方法が生物劣化を受けて空洞化した部分にコンクリートを詰めることや塗装をすることとなっており,これらの対応方法にも問題があると考える。また住宅型のジョグロについても王宮型ジョグロほど系統だった補修は行われていないが,コンクリートや樹脂等で空洞部分を補修している柱も見られた。ただし,用いているチーク材はかなり大断面であるため,生物劣化によって建物を支える強度が急速に低下するという印象は受けなかった。今後,これらの建築物について継続的な調査を行っていきたいと考えている。4. おわりに 生物劣化の観点からほとんど調査されてこなかったジョグロ建築を対象に,王宮と住宅という異なるタイプについて,調査を行った。その結果,乾材シロアリによる被害がかなりみられ,これらの対応についても検討する必要があると考えられる。また,風通りの良い建築様式であるのに含水率が高い部材がみられ,腐朽の危険度が高い箇所が散見されることがわかった。今回行ったような調査によって,建物の生物劣化による被害について検討可能であることがわかった。 今後,これらのデータをより詳細に精査すると共に,継続的調査を行うことで進行の度合いなどを評価していきたいと考えている。また,すでに300年以上経たジョグロ建築が現存している都市があるため,これらの調査についても実施したいと考えている。併せて,建物に用いられているチーク材の産地別耐久性試験や抽出成分の試験,そして残存耐力評価などに発展させることによって,より安全で耐久性のあるジョグロ建築の維持に貢献できると考える。5. 謝   辞 本調査を実施するにあたり,The IndonesianInstitute of Sciences のSulaeman Yusuf 博士およびMaya Ismayati 氏,University of Gadjah Mada のJokoSulistyo 博士およびZiyadatil Inayah 氏,京都大学生存圏研究所のYulianto P Prihatmaji 氏に現地でのご助力いただきました。また,調査の調整にあたって,京都大学生存圏研究所 吉村 剛教授にご助力いただきました。ここに感謝の意を表します。本調査は,グローバルCOE プログラム?生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点? の次世代研究イニシアティブ研究助成のサポートによって行った。引用文献1)森 拓郎・香束章博・簗瀬佳之・小松幸平(2010):シロアリ食害材の強度特性と密度および超音波伝搬速度の関係,材料,59?,297-302.1)京都大学大学院農学研究科      2)京都大学生存圏研究所        3)筑波大学大学院生命環境科学研究科