ブックタイトルしろありNo.156

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しろありNo.156

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概要

しろありNo.156

( 21 )という?侵入防止型? の物理的防衛を行う(図5)。Cryptotermes 属の兵隊の頭幅と巣の中の蟻道のサイズは一致しており,敵の侵入を防ぐのに効率よく形作られている11)。Cryptotermes 属の兵隊の前胸側板は強固に角質化しており(図5:右),簡単には敵に引き出されないようになっている3)。またCryptotermes 属の兵隊の大顎は退縮しており,攻撃にはほとんど機能していないと考えられる。4. ミゾガシラシロアリ科の防衛方法 温帯から熱帯域において繁栄したミゾガシラシロアリ科の仲間は,日本には2属9種が分布している2)。日本においては最も馴染み深く,家屋害虫としても悪名高いヤマトシロアリなどのReticulitermes 属とイエシロアリなどのCoptotermes 属である。南西諸島にはReticulitermes 属が6種,Coptotermes 属が1種生息している5)。 両属とも鋭く発達した大顎を持っており,大顎でかみつきつつ額腺からの分泌物を敵に向けて放出するという?かみつき分泌型? の防衛を行う(図6)。ミゾガシラシロアリ科の兵隊は,その名の通り頭部に溝が通っているものが多い(図7)。これは額腺孔から出した分泌物を上唇付近まで流し,敵にあびせるのに適した構造になっている12)。額腺分泌物の成分はReticulitermes 属とCoptotermes 属では大きく違っている12 ~ 16)。Reticulitermes 属では揮発性の高いテルペン類が主要成分であるが,Coptotermes 属は長鎖型アルカンやムコ多糖類,遊離脂肪酸などが含まれている。Reticulitermes 属の額腺分泌物の貯蔵嚢は,頭部から胸部にかけて限定されており,貯蔵量は少ない。一方Coptotermes 属の貯蔵嚢は腹部全体にまで広がっており,大量の分泌液を貯蔵している(図図5 ダイコクシロアリの兵隊。Cryptotermes 属(ダイコクシロアリ)の兵隊は,巣の出入り口を防ぐために,頭部全体が非常に堅く,しかも大顎は退縮し頭部前面が平らになっている。走査型電子顕微鏡写真(右)では,頭部前面が上に向いている。前胸側板(矢印)が角質化していることがわかる。大顎は非常に小さい。スケールバーは1㎜。図6 かみつき分泌型のミゾガシラシロアリ科の攻撃。敵に向けてかみつこうとしているところ。Reticulitermes属(ヤマトシロアリ:左)の兵隊の額腺分泌物は揮発性が高いため見ることができないが,Coptotermes属(イエシロアリ:右)の兵隊では,大顎の付け根の上唇の上に白い分泌物が溜まっているのが見える。