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しろありNo.156

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しろありNo.156

?報 文? シロアリ用薬剤施用がアリ2 種(Lasius japonicus Santschi. L. fuji Radchenko)とワラジムシ(Porelio scaber Latreille)へ及ぼす影響青  山  修  三 ( 1 )しろあり No. 156, pp.1―6. 2011年7月1. はじめに シロアリ用薬剤は当然ながら防除標的はシロアリである。ところが,特に土壌処理は大量に施用されるところから,本来の標的以外の非標的動物であるアリ類やワラジムシなど土表徘徊動物に多大な影響を与えている恐れがある。仮にこれらの動物を死に至らしめると,結果的に依頼されていない不快害虫まで退治をしていることになり,無用な殺生はすべきではないし,無意識のうちに自ら防除業務の生業範囲を狭めてはいまいかとの懸念もある。また,一方では用途外使用問題がある。北海道はシロアリ駆除需要が大変少ない地域である1)にもかかわらず,いわゆるホームセンターではシロアリ防除剤が販売されている。したがって,一般市民が本剤をアリ類防除に卓効力有りと誤解して転用している可能性が考えられ,我々防除専門家としては薬剤の用途外使用を諌めなければならないところである。他方のワラジムシは札幌市内の家屋周辺では,放置された建材の下や外基礎際の犬走りに敷いた砂利の間に潜み,本来の餌である落ち葉の他に生ゴミ中の肉,魚,野菜などを食べている夜行性の陸生甲殻類である2)。シロアリ防除の際にワラジムシの餌への薬剤汚染は充分考えられる。著者の腐葉土培地実験によって,かつてシロアリ用に用いられた有機塩素剤のディルドリンやリンデン,有機リン剤フォキシムなどともにピレスロイド系薬剤のワラジムシに対して殺虫力(即効力と残効力)があることが判明している3)ので,これらのシロアリ用薬剤施用がアリ類やワラジムシへ影響を与えていたと推定された。今日では,?日本しろあり対策協会の指導は出来るだけ地球環境にかける負荷量が小さくなる方法で使用されなければならないとされている4)。環境汚染防止の意味からも薬剤の過剰使用を避けるべきであり,非標的動物への負荷を軽くすることが理想である。しかし,市販シロアリ薬剤の土表徘徊動物に対する影響に関しての情報は少ない。本報告は土表徘徊動物に対する薬剤効果の評価が目的ではなない。アリ類やワラジムシに対する影響を知った上で,シロアリ防除施工をしていただくのが著者の本意である。2. 材料および方法2.1  供試虫 トビイロケアリ(Lasius japonicus Santschi)とクロクサアリ(L. fuji Radchenko)はともに2006年7月15日に札幌市清田区内で採集し,10%砂糖水と湿らせたペーパータオルを与えたポリエチレンフタレート製容器内で飼育(室温約25℃)したのちに供試した。ワラジムシ(Porelio scaber Latreille)は実験開始前1週間以内に札幌市清田区内の広葉樹人工林で採集した後,樹脂製バット(30×17×10㎜)内で,ジャガイモ,煮干と湿度調節用に水を含んだペーパータオルを与え,室温20 ~ 25℃で飼育した個体のうち,体長8㎜以上のものを供試した。2.2 供試薬剤 市販されているシロアリ用土壌処理剤の中からピレスロイド系としてビフェントリン5%乳剤(ケミホルツ製)を,ネオニコチノイド系としてチアメトキサム25%水和性顆粒剤(シンジェンタ製),イミダクロプリド20%乳剤(バイエルクロップサイエンス製),クロチアニジン5%乳剤(日本エンバイロケミカルズ製)の3種を,有機ケイ素系としてシラフルオフェン15%乳剤(大日本除虫菊製)を供試した。これらと比較するために防疫用殺虫剤である有機リン系フェニトロチオン10% FL 剤(シントーファ