ブックタイトルしろありNo.158

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しろありNo.158

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概要

しろありNo.158

( 12 )内側に,茎の切り口(小口,根本側)が外側になるように葺かれる。葺かれた屋根は,仕上げに茅を刈り込んでほぼ完成となる。従って,完成後の茅葺き屋根では,斜めに切られた茎と,茎を取り囲む葉鞘の切り口が露出している。 茅の典型的な小口(切り口)の様子を図9に示す。この図では,外側には2枚の葉鞘,その内側に茎が存在する。茎は外側の固い部分,竹で言うと棹に相当する部分と,内側の白色の髄より構成される。棹の部分はさらに詳細には,表皮細胞と主に篩管(光合成生産物の通路)と道管(水分の通路),繊維細胞(茎の強度に関係)よりなる維管束と,この維管束を取り囲む柔細胞(軟らかい組織,養分の貯蔵庫)よりなる。髄部分は全て細胞壁が薄く,径の大きな柔細胞よりなる。なお,髄部分で一部柔細胞を欠き,中空になっている茎も存在する。このほかに白色ではなく赤褐色の髄を持つ茎も存在する。これらが全て茅葺に用いられる。 前項で多くの茅葺きで屋根表層部分に黒変が生ずること,および黒変部分で茎の多くが中空になっていることを示したが,この現象とその生成メカニズムについては,以前に報告している9)。その際に報告したものであるが改めて劣化して中空になった茅の小口を図10に示す。この中空になる原因は菌類による髄部柔細胞の分解(図11)であり,黒変化し劣化した茅からは多くの菌類が分離されている9)。これら菌類の中にはセルロース(茅の主要成分)分解菌類も存在した。図12にそれらセルロース分解菌類の例を示しておく。図10 茅葺き屋根表面で黒変化し,中空になった茅の小口面上:葉鞘と茎9) 下:茎の顕微鏡写真図9 茅の断面図11 菌類による柔細胞の分解9)