ブックタイトルしろありNo.159

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しろありNo.159

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概要

しろありNo.159

10研究トピックスResearch Topics1.はじめに シロアリなど社会性昆虫が, コロニー仲間のコミュニケーションの手段としていわゆるフェロモンなどの化学物質を利用していることは良く知られている。このことは, シロアリ防除において, 生理活性を有する化合物をベイト剤に添加することによって, より効果の高い製剤が開発される可能性を示唆している。 これまでに, シロアリ防除におけるより喫食性の高いベイト剤の開発を目指し, 誘引活性のある物質やその他の種々の化合物が添加物として検討されてきた。しかしながら, こういった研究のほとんどはイエシロアリ属(Coptotermes)やヤマトシロアリ属(Reticulitermes)などのいわゆる地下シロアリを対象としたものであり, 熱帯・亜熱帯地域に広く分布し, 経済的に重要なグループであるレイビシロアリ科のシロアリ(乾材シロアリ)に関するものは少ない。Indrayaniらは, アメリカカンザイシロアリ(Incisitermes minor (Hagen))を木材中に掘った人工的なトンネル内に閉じ込め, 殺虫成分を含有したジェル状の製剤を外部からトンネル内に注入して, その効果について検討した1,2)。その結果, アメリカカンザイシロアリを対象としたジェルベイト剤の基本的な可能性は確かめられたものの, より信頼性の高い方法とするためには, 材中にしばしば孤立的に穿孔している個体をいかにして効率的に製剤へと誘導し, ベイト剤を摂食させるか, という点が課題として残った。 本研究では, 乾材シロアリを対象としたベイト剤への応用を目指し, アメリカカンザイシロアリに対する数種化合物の道しるべおよび誘引活性について検討した3)。具体的には, ①アメリカカンザイシロアリ職蟻の分泌する生理活性物質の探索, および, ②アメリカカンザイシロアリに対する数種化合物の道しるべおよび誘引活性の検討, という2つの課題である。アメリカカンザイシロアリ( ( Hagen))に対する数種化合物の道しるべおよび誘引活性京都大学生存圏研究所 エミリア・クリサンティ2.実験方法2.1 アメリカカンザイシロアリ職蟻の分泌する生理活性物質の探索2.1.1 シロアリ 供試シロアリとしては, 和歌山県南部K町において食害を受けた納屋の解体材から採集したアメリカカンザイシロアリ(Incisitermes minor (Hagen))職蟻を用いた。2.1.2 実験方法 60頭の健全なアメリカカンンザイシロアリ職蟻を,揮発性物質捕集用活性炭吸着剤(RCC18, GLサイエンス)を装着したMonotrap?ヘッドスペースガスサンプリングキット(GLサイエンス)中に24時間密封した。吸着された揮発性物質をヘキサンに溶解し, GC-MS分析(Type 6890N, Agilent Technologies)によって解析した。2.2 アメリカカンザイシロアリに対する数種化合物の道しるべおよび誘引活性の検討2.2.1 シロアリ 供試シロアリとしては, 同じく和歌山県南部K町において食害を受けた納屋の解体材から採集したアメリカカンザイシロアリ職蟻を用いた。2.2.2 化合物 供試した化合物は, レイビシロアリ科の別種シロアリの道しるべフェロモンとして報告例のある(Z)- 3 -ドデセノール((Z)- 3 -dodecenol), 地下シロアリの誘引物質として報告例のある2-フェノキシエタノール(2 -phenoxyethanol)および -カンファー(d -camphor), そしてゴキブリの誘引物質として報告例のあるメープルラクトン(maple lactone)の計4種類である。2.2.3 実験方法 4種化合物の道しるべ活性および誘引活性は図1に示す方法で評価した。 道しるべ活性については, ろ紙に直径7cmの円を鉛筆で引き, その円周上に化合物を一定量施用して, 職