ブックタイトルしろありNo.159

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しろありNo.159

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概要

しろありNo.159

46は原生動物やバクテリアが共生しており, 摂取したセルロースなどの有機物をこれらとタイアップして分解し無機物に変えて自然界に還元している。タイワンシロアリのようにキノコと協力して分解活動を行う種もいる。すなわちシロアリは自然界におけるゴミ問題を無駄なく合理的に解決している生物であり, 「リサイクルの達人」といえよう。 このようにシロアリは話のネタが豊富で, 充分に生徒の興味・関心を引き, 教育素材として有用であると考えられる。しかし, シロアリを教材として選んだ理由はこれだけではない。もう一つ大きな理由がある。それは・・・8)シロアリ教材化の最大の理由 筆者がシロアリを大好きなのである。シロアリとの付き合いは30年を超えるが, 付き合えば付き合うほどシロアリは謎が多く, 奥深い生き物だということがわかってきた。1980年には当時日本未記録種だったProcapritermes sp.( 現在のムシャシロアリ)を発見するという幸運にも恵まれた。 どのシロアリも興味深いが, 特に筆者のお気に入りは中・後胸背板に突起を有するナカジマシロアリの1令幼虫である(図2)。この突起を筆者はエンジェルウィングと呼んでいるが, 脱皮後の2令幼虫では小さくなり, 3令幼虫では完全に消失する。ナカジマシロアリ以外のどの種にも見られない特異な形態である。一体これは何なのか? シロアリの不思議はまだまだある。コウシュンシロアリの藁色に色づく補充生殖虫はすべて雄だったり, シロアリに寄生する菌類の存在やシロアリに擬態している可能性があるハサミムシがいたり, シロアリなのに「黒い」タカサゴシロアリは日中, 行列を組んで行進するというシロアリらしからぬ行動をする等々である。 こんなにも不思議に満ちたシロアリを生徒に伝えずにはいられないとの思いから, 中学校3学年理科「単元6自然と人間」の発展学習としてシロアリの授業作りに取り組んだ。この「シロアリの授業」が, 体験を通し, 楽しく印象的に生物のつながりについての理解を深める学習となることを願ってやまないのである。4.シロアリを教育素材として用いた発展学習の実践例 シロアリを用いた授業のタイトルは, 「シロアリ, この不思議な生き物」である。基本的には4時間の計画で進めるが, 教育課程における授業時数確保から2時間または3時間に短縮して行う場合もある。 授業の流れは, オープニングから始まり, 以下1.「名前が不思議」-アリじゃないのにシロアリ-2.「形が不思議」-えっこれみんなシロアリ?-3.「巣が不思議」-生活様式の違いが巣を決める-4.「役割分担が不思議」-シロアリの階級分化-5.「行動が不思議」-ボールペンファクター-6.「お腹の中が不思議」-シロアリのお腹の中に              別の生き物が-7.「自然界における役割がすごい」         -これがシロアリの真の姿!-である。この授業を実施するに当たり準備したのは,図1 タイワンシロアリが栽培するキノコ図2 ナカジマシロアリの1令幼虫