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しろありNo.160

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概要

しろありNo.160

10 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 3 . 7 N o . 1 6 0のためのqRT-PCRには, Step One PlusR Real-TimePCR SystemおよびGo TaqR 2-Step RT-qPCR Systemを用いた。対照遺伝子としてNADH-デヒドロゲナーゼを用いた。 siRNA(Rssi 1, Rssi 2, Rssi 3)と長鎖dsRNAは, 注入後1?3日間, 職蟻におけるヘキサメリン遺伝子の発現を効率よく抑制した。注入後5日目からヘキサメリン遺伝子発現量の増加傾向が認められ, 7日目には約2 ?26倍の発現量になった(表1)。ニンフでは,siRNA(Rssi 3)は注入後2?7日間, ヘキサメリン遺伝子の発現を抑制した。長鎖dsRNAは, 注入後1 ?5日間効率的に発現を抑制したが, 7日目には発現量が約41倍に増加した(表2)。シロアリ1頭あたり3.0 ngのsiRNAあるいは長鎖dsRNAを注入した際に, 各siRNAと長鎖dsRNAはヤマトシロアリ職蟻とニンフにおけるヘキサメリン遺伝子の発現を効果的に抑制した。 この様に, シロアリでsiRNAならびに長鎖dsRNAがともに有効であることが示されたので, ヘキサメリン以外の遺伝子, 例えばクチクラ合成に関与する遺伝子を標的としたsiRNAあるいは長鎖dsRNAを投与することで, シロアリを駆除することが可能ではないかと推測される。調製したRNAを環境中に放出した際に,(生物多様性保全の観点から)他の生物に影響しない化学合成法でRNAを合成するのであれば, 長鎖RNAよりもsiRNAの方が技術的にもコスト的にも有利である。具体的には, 500塩基長にも及ぶRNAを化学的手法により合成しようとすると, 合成の途中でRNA中に現れる相補的な配列が組み合わさることで部分的に2本鎖の領域が生じるため合成が阻害され, 効率的なRNA合成ができなくなる。この様な理由から, シロアリ駆除にはsiRNAの利用が有望であると考えられる。5.3  イエシロアリ共生原生生物に対する短鎖RNAの影響24) ここでは, イエシロアリ(Coptotermes formosanus)の後腸内に生息する3 種類の共生原生生物Pseudotrichonympha grassii, Holomastigotoides mirabileとSpirotrichonympha leidyiのエンドグルカナーゼ(順に,PgEG, HmEG, SlEGと略す)を標的としたsiRNAを設計・調製した。これら3種類のsiRNA水溶液を添加したろ紙を宿主であるイエシロアリに摂食させることで, 共生原生生物のエンドグルカナーゼの発現を抑制すると, 原生生物ならびに宿主イエシロアリにどのような影響が表れるか検討した。 DDBJ (DNA data bank of Japan, http://www.ddbj.n i g . a c . j p ) で公開されている既存配列( P g E G;accession No. AB071001, HmEG;accession No.AB071011, SlEG;accession No. AB189037)をもとに,siRNA Target Designer Programを用いてsiRNAを設計した。具体的なsiRNAの標的DNA配列は, PgEG(333- 351 nt)5’-gctgtcgtacacggttgac-3’, HmEG(265 - 283nt)5’-ggtgggttcgcgagtgtac-3’およびSlEG(231 - 249nt)5’-gagcctgacggaggatatc-3’の各19 ntの3’末端にttを付加した21 ntからなる配列とした。また, 昆虫や原生生物の遺伝子と相同性のないDNAオリゴヌクレオチドの配列を元に合成したsiRNA(UCS 1-3)をコントロールとして用いた。 siRNAによる遺伝子の発現抑制は, 宿主シロアリによるsiRNA添加ろ紙の摂食を通して行った。30頭のイエシロアリ職蟻を, 100 μLのsiRNA溶液(125 ng/μL)を添加した直径20 mmのろ紙を設置した直径90mmのシャーレで飼育した。共生原生生物のエンドグルカナーゼを標的としたsiRNA(PgEG, HmEG,SlEG)を用いた試験の飼育期間は3週間, 無関係配列のコントロールsiRNA(UCS 1-3)を用いた場合の飼育期間は2週間とした。またブランク試験として超純水を添加したろ紙による飼育も行った。シロアリの死体を毎日除去しシロアリの死虫率を記録した。試験開始後の1週間, 毎日2頭ずつのシロアリをピンセットで解剖し後腸を引出した。スライドグラス上で後腸を引裂き, 共生原生生物を0.5 mLの生理食塩水に穏やかに分散させた。直ちに白色光下でEclipse 80i light図2  siRNA投与イエシロアリ後腸内の原生生物a, b;siRNA未投与, c;PgEG siRNA投与, d;HmEG siRNA投与。Pg, P. grassii; Hm, H. mirabile; Sl, S. leidyi; Bar, 100 μm。