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しろありNo.160

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しろありNo.160

Termi te Journal 2013.7 No.160 152. 北海道の高気密高断熱住宅と本調査の必要性 北海道は高断熱高気密建築の普及において日本をリードしていると言われている7)。断熱と気密性能を向上させるためにさまざまな構法, 技術そして建材があるが, それらの建築精度を精査する手段はほぼ統一されていて, 必要に応じて完工時に後述する方法で気密性能測定(写真4)が行われている。高断熱高気密建築の目的は空気と熱移動の遮断だが, 気密が非常に高いことから建築依頼主からアリの侵入さえも拒むかのような誤解が生じることがある。まれに建築主のごく一部から「隙間があるからアリ類が侵入する」, 即ち建築精度が低い, いわゆる手抜き工事があるのではとの主張まで発展した場合, 建築業者にとっては思わぬトラブルになりかねない。残念ながら, 今のところアリの家屋内侵入と気密性能との因果関係について説明された資料は見当たらない。本稿ではアリが侵入した外側断熱木造家屋の気密性能測定によって得られた値が, 侵入しなかった家屋との間で違いがみられるかを比較検討したものである。あらかじめ申し上げておくが, 調査に協力頂いた建築メーカーは建築主とのかかるトラブルは一切無い。むしろ無いからこそ調査・測定値の公開にご協力頂けたとご理解頂きたい。3. 気密性能測定方法3.1 調査した家屋の構造 測定した家屋は外側断熱木造家屋と呼称され, その概要は木質フレームに木質パネルを密着させた外側を, 透湿抵抗の高いフィルムで家屋全体を覆い, 更に断熱パネルを連続的に張ることで気密性と断熱性を高めた構造であった。コンクリート打設の床下は半地下居住空間あるいは配管スペースになっていて室内環境に同調している(図1)が, いずれも床下には外気を取り入れる換気口は無い(床下換気口が無い外基礎は近年の北海道における一般的な建築傾向である)。木質フレームはエンジニアリングウッド, 木質パネルの片面に構造用合板が用いられ, これらの接合で組み合わされた躯体外側を覆う気密フィルムに高分子ポリフィルム(厚さ0.5mm)を, 断熱材に高密度押出発泡ポリスチレン(厚さ50mm)が使用された。次いで通気層とサイディングの外装仕上げで, 壁の厚みの合計は240mmであった。ドアと窓はすべて木製サッシで,写真4 気密測定1図1 調査家屋の構造図