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しろありNo.160

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しろありNo.160

20 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 3 . 7 N o . 1 6 0報 文Reports静岡市蒲原東部コミュニティセンター外周壁劣化点検報告書横浜国立大学名誉教授 矢田 茂樹1.施設概要と点検目的 静岡市蒲原東部コミュニティセンター(所在地:静岡市清水区蒲原)は, 平成5年2月に竣工した大型湾曲集成材(樹種:カラマツ)製の建物である(写真1)。この建物は構造部材が「表わし」になっていて, 湾曲集成材の美しい木組みによる木造空間は, 地域住民の憩いの場・癒しの場として親しまれている。 この建物は背の高い壁面(最大:10.5m)を持ち,軒や庇の出がほとんど皆無のため, 外周壁の木部は常に日光や風雨に曝されている。さらに, 水切り等の雨仕舞が不完全であること, 18.5年の時間経過で防水シールに劣化を生じていること等の理由で, 外壁面を流下する雨水は, しばしば室内へ漏水するとともに基礎部の木部を湿潤化している。したがって, この建物の外周壁はシロアリ食害や腐朽被害が発生しやすい環境下にある。 平成23年10月及び11月に実施されたシロアリ点検の結果によれば, この建物には「腐朽とヤマトシロア2.点検作業日と建物の状況 点検作業日は平成23年12月12日(月)であった。すでに, 東海地方は冬の乾燥期に入っており, 当日も晴天であった。したがって, 建物の木部は乾燥していた。 敷地は東西の幅が狭いため, 建物は南側を除き敷地リによる蟻害が発生。発生箇所は主に基礎周辺部であるが, 東壁面の一部では1階と2階の境界部にある積層梁まで被害が拡大」と報告されている。このため,被害が建物の構造強度にどの程度の影響を与えているかを判断するために, 定量的な劣化診断の必要性が生じた。 そこで今回の点検は, 外周壁基部にある柱の全数について定量的な劣化診断を行うとともに, 東と北の外周壁については1階と2階の境界部にある積層梁の劣化診断を実施することとした。すなわち, 今回の点検目的は, 構造上重要な部位の劣化点検を実施することによって, 当該建物の今後の使用の可否に関わる判断材料を得ることと, 維持管理(補修を含む)に関わる指針を得ることである。注)建物の小屋組みも重要箇所であるが, 高所作業車等が必要で時間も要するため, 今回は点検対象としていない。写真1 建物の外観(湾曲集成材が優雅な曲線美を醸し出している)いっぱいに南北に長く配置されていた。隣接地は工場の駐車場・資材置き場になっていて日当たりはおおむね良好であった。地面の多くはアスファルト舗装されていたが, 一部には植え込み等を含む土壌面が存在した。建物の東側と北側の犬走りは砂利を敷いた土壌面