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しろありNo.160

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概要

しろありNo.160

Termi te Journal 2013.7 No.160 31 以上, 局所的には構造部材の断面欠損率が50%を越えるほどの劣化を生じた箇所が存在したが, 建物全体はまだ一体性を維持していて傾き・変形・沈み込み等は発生しておらず, 接合部のズレや部材の脱落も発生していなかった。したがって, この建物の現状は全体的にみると直ちに「使用禁止の処置を取る」ほどの劣化は生じていないと推察された。ただし, 壁面からの漏水が日常的に発生していて腐朽・蟻害が現在も進行形であることから, なるべく早急に補修・補強することをお薦めする。, 注) 建物の使用の可否は, 法律上, 構造設計計算書との照合及び今回の診断結果に基づく再計算を経て建築士によって判断されるべき事柄である。したがって, 今回の資料をもとに建築士に相談することをお薦めする。7.今後の維持管理(補修含む)に関わる助言 以上の点検結果を踏まえて, 今後の維持管理(補修等)への助言を下記に示す。1)シロアリの駆除 この建物にはシロアリが蔓延している。被害は, 床下のみならず壁面を上部に向けて拡大中であるので,緊急に駆除する必要がある。ヤマトシロアリは大集団でコロニーを形成する社会性昆虫であるので, 女王アリを含めて根絶することが重要であろう。2)補修・補強 この建物の今後の耐用年数をどこに設定するか(10年後? 20年後? 30年後?)によって対応する補修内容・補修範囲が異なる(当然, 補修経費も異なる)。シロアリ駆除がされたことを前提に, 大まかな補修・補強例を以下に示す。 注) これは, あくまで参考例として提示するものであって, 補修方法を拘束するものではない。① 10年程度の耐用年数を想定する場合劣化の激しい箇所について, 建築士と協議のうえ必要な補修(部分的な部材交換など)及び補強(新たな補強部材の取付など)を行う。漏水については, 応急処置で対応する。そして, 外周壁は撥水性の高い含浸型塗料で再塗装する。② 20年程度の耐用年数を想定する場合前述の①に加え, 本格的な漏水対策を実施する。例えば, 窓の上への庇の取付け, 窓枠周りの止水, 柱の板金被覆(界面に空気通過層を設けること), 柱脚部への雨水侵入防止処置などである。なお, この建物は大きな建物(ホール)に小さな建物(公民館)が直角に付加されていて屋根構造が複雑になっている。この箇所の排水対策・漏水対策も実施する。③ 30年程度の耐用年数を想定する場合現在の建物は軒の出が皆無なので, 長期耐用を実現するためには上記①及び②の処置に加えて, 軒の出を確保するための屋根の改修工事が不可欠である。さらに東面は軒高が高いので,1階上部に庇等の取付けが必要である。3)定期的な点検 建物の形状変化や傾き, 室内への漏水状況, 接合部の変状等は, 目視で簡単に点検できる。したがって, 今後は半年に1回程度の頻度で点検し, その結果を記録しておくことをお薦めする。また, シロアリ被害は駆除したとしても2, 3年後に再発することがあるので数年毎(長くても5年毎)に専門家による点検をお薦めする。以 上8.謝辞 この報文は, 公共建築物について管理者からの依頼を受けて実施した劣化点検の報告書である。掲載を許可いただいた関係者に謝意を表する。