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しろありNo.160

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しろありNo.160

34 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 3 . 7 N o . 1 6 0N-2年築N-1年築N年築N-2年N年におけるストック量N-1年 N年 ・・・N-1年 N年 ・・・N年 ・・・-15-10-505101950 1970 1990 2010 2030 2050炭素削減量(百万t-C/年)年-15-10-505101950 1970 1990 2010 2030 2050炭素削減量(百万t-C/年)年蓄積変化法生産法大気フロー法蓄積変化法生産法大気フロー法排出 ← → 吸収 排出 ← → 吸収量が去年に比較して増えていればその分だけ吸収,減っていればその分だけ排出とする。しかし木製品のストックに関する統計はほとんどないため,IPCCガイドラインにもあるように毎年の投入量と廃棄量からストックを推計する方法を取ることとした。つまりある年の1月1日に住宅が10戸あったとして,12月31日までに5戸建てて(投入量)3戸解体したら(廃棄量),翌年1月1日には住宅は12戸となる。したがってストック量の変化は12-10=2戸となり,2戸分の住宅に貯蔵されている炭素量を大気中から吸収したと計算することができる。ただし実際は建築物,家具,紙について毎年の投入量はある程度統計を用いて把握できるものの,廃棄量の把握は難しい。そこで本モデルは投入量の統計のみを用い,建築物,家具,紙に投入された木製品がある関数に従い投入された翌年から年々減っていくという構造を取っている。例えばN年年始に存在している木材のストック量を求めるには,計算の開始年(本モデルでは1950年)に投入したものでN年にまだ残っている量+1951年に投入したものでN年に残っている量+・・・(N-1)年に投入したものでN年に残っている量を計算することになる(図2)。 また本モデルでは1950年から2006年までは実勢値(統計からの計算値)とし,2007年以降は2つのシナリオに沿って木材利用の状況が推移していくと仮定して比較を行っている。シナリオ1は木材利用が2006年までと同じように2050年まで続いていくというものである。具体的には毎年の建築着工面積のうち35%が木造建築物であり,家具生産量のうちの35%が木製家具であるとした。これに対してシナリオ2は2050年までに木材利用を振興していくというものである。シナリオ1では建築着工中の木造率,家具製造中の木製率を35%で一定としたが,シナリオ2ではその数値を2050年に70%に達するよう徐々に上昇させた。 計算の結果を図3に示す。まずIPCCが提案した3つの手法(2.2項参照)のどれを使うかにより計算結果が大きく異なることが明らかとなった(図3上)。特に大気フロー法で計算した際に排出が大きくなっているのは,この手法では輸入した木材が吸収とみなされず排出だけが計上される仕組みになっているためである。木材輸入国である日本は大気フロー法が採択された場合は大きな排出量を負うことになってしまうといえる。また,木材利用の状況が現状のまま続いていくとすると(シナリオ1),どの手法が採られてもあまり大きな吸収は見込めないことも明らかとなった。これは主に今後建築の着工量が減るなどして木材利用が減少することが予想される一方,着工量の多かった図2  木材ストック量の求め方(建築を例とした概念図)建築着工面積が統計から得られれば(斜線部分),その後は建てられた建築物がある関数に従って減少していくと仮定することによりストック量を求めることができる。図3  各手法を用いて計算した吸収・排出量上:シナリオ1(木材利用が現状のまま続いた場合),下:シナリオ2(木材利用を振興した場合)2006年以前は統計値からの推計,2007年以降はシナリオに沿った予測