ブックタイトルしろありNo.161

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概要

しろありNo.161

Termi te Journal 2014.1 No.161 115. シロアリ塚植生の利用 ナミビア北東部のM村において, 人々はシロアリ塚上に生育する樹木の果実を利用する。シロアリ塚に出現した樹木の約64%が動物によって種子が散布される種(動物散布種)であったのに対して, 周辺サバンナでは動物散布種は約33%であった29)。動物散布種は, 動物に果実を食べてもらうため, 多肉質のおいしい果実をつけるものが多い。ナミビア北東部では, ボロボロノキ科のXimenia americana, サルバドラ科のSalvadorapersica, クロウメモドキ科のBerchemia discolorやZiziphusmucronata, パンヤ科のAdansonia digitata, トウダイグサ科のEuphorbia ingens, オトギリソウ科のGarcinia livingstoneiなどの果実が人々に利用されている。これらすべてがシロアリ塚にのみ出現する樹種ではないが, これらの樹木がシロアリ塚に多い傾向がみられる(表1)。人々はシロアリ塚に生育している樹木を特に好んで利用するわけではないが, これらの樹木がシロアリ塚に多く生育するため, 必然的にシロアリ塚で果実採集をすることが多くなる。 また, 北東部ではシロアリ塚そのものやシロアリ塚上の植物がランドマークになる。北東部一帯はモパネが優占するモパネウッドランドにあたり, 地形の起伏も小さいため, 景色が単調である(写真4)。その中で,例えば, シロアリ塚に限定的に生育するトゥダイグサ科のEuphorbia ingensやシロアリ塚に限定される訳ではないが特徴的な樹形のパンヤ科のAdansonia digitataは,植物とシロアリ塚の形態がセットになって, 位置を知るひとつの目印になっていた(写真5)。先述した果実利用においても, シロアリ塚がランドマークになるため, そこに果実をつける樹木があるという記憶が残りやすいということがあるようだ。 北西部のO村においてシロアリ塚植生の積極的な利用はみられない。ただし, 北西部では, シロアリ塚に枯死木が多いことが一つの特徴である33)(表1)。この地域では, 薪として利用するために樹木を伐採することはないが, シロアリ塚にみられる枯死木を薪として利用することがある。 ナミビアの北西部において, シロアリ塚に出現した樹木は, 周辺サバンナに出現した樹木の種構成を反映していたのに対して, 北東部ではシロアリ塚に限定的な種が多く, シロアリ塚上には周辺サバンナに比べて多様性の高い植生が形成されていた29)(表1)。このように, 地域によってシロアリ塚植生が大きく異なる背写真3  ナミビア中部, シロアリ塚とその土を使って作られた レンガ(左端の四角いものがレンガ)    * 2006年8月17日,著者撮影写真4  ナミビア北東部, モパネウッドランド    * 2009年11月11日,著者撮影写真5  ナミビア北西部,シロアリ塚とシロアリ塚に特有な トウダイグサ科のEuphorbia ingens    * 2009年11月17日,著者撮影