ブックタイトルしろありNo.161

概要

しろありNo.161

Termi te Journal 2014.1 No.161 13れる29）。さらに, シロアリ塚の形態が変化する中で植物への影響も変化する。キノコシロアリの塚の表面は非常に堅いため, 活動中は植物の侵入が阻害されるが,塚が放棄され形態が変化する中で, 塚に多くの植物が侵入してくることがわかっている29）。一方, 地域スケールで見ると, シロアリ塚の植物への影響は降水量によって変化し, 降水量が増えるにつれてシロアリ塚植生と周辺サバンナの植生の違いが顕著になることが指摘されている37）。したがって, 本論の北西部と北東部の調査地におけるシロアリ塚植生の違いは, 両地域で大きく異なる降水量が一因として作用していると考えられる。６. おわりに　ナミビア各地でシロアリ塚はいろいろな形で人々に利用されている。牧畜を主要な生業とする北西部の人々は, 家畜のミネラル補給にシロアリ塚の土を利用する。農耕を主要な生業とする北東部の人々は, 耕作地内で作付け地としてシロアリ塚を利用し, ほとんど起伏がない地形の中でランドマークとしても認識している。さらに, ともに雨季に洪水に見舞われる北東部と北中部では, 洪水の被害を避けるため, それぞれシロアリ塚を家畜囲いの設置場や住居の立地の目安として利用している。これらの利用にみられるように, 各地においてシロアリ塚は必需品とまでは言えないものの, それぞれの地域の異なる社会, 自然環境の中で一定の機能を持っており, 「生態系エンジニア」として捉えられるシロアリの機能は, 地域社会における人々の活動にも少なからず影響している。謝辞　本研究は, 日本学術振興会科学研究費補助金・特別研究員奨励費（課題番号：21?4226）, ならびに「組織的な大学院教育改革推進プログラム：研究と実践を架橋するフィールドスクール（社会に貢献するアジア・アフリカ地域専門家の養成コース）」の助成によって実施されました。引用文献1） 藤岡悠一郎（2013）：昆虫食への眼差し?ナミビアの昆虫食と資源活用への展望, Synodos. AcademicJournalism （2013.05.25, http://synodos.jp/international/4098）2） 八木繁（2007）：アフリカの昆虫食‐ ケニアにおけるシロアリの利用を中心に, “アフリカ昆虫学への招待”, 日本ICIPE協会編, 京都大学学術出版会,pp. 199-213.3） Lee, K.E. and T.G. Wood（1971）: Termites andSoils, Academic Press, London, New York.4） Sileshi, G. W., P. Nyeko, P. O. Y. Nkunika, B. M.Sekematte, F. K. Akinnifesi, O. C. Ajayi （2009）:Integrating ethno-ecological and scientificknowledge of termites for sustainable termitemanagement and human welfare in Africa,Ecology and Society, 14, 1.5） 渡辺公三（1989）：穴と蟻塚　アフリカにおける大地, DOLMEN 再刊1号, 141-116.6） 菅栄子（2007）:シロアリ塚に関する迷信, “アフリカ昆虫学への招待”, 日本ICIPE協会編, 京都大学学術出版会, pp. 214-215.7） Mguni, S （2006）: Iconography of termites' nestsand termites: Symbolic nuances of formlings insouthern African san rock art, CambridgeArchaeological Journal, 16, 53-71.8） Dangerfield, J. M., T. S. McCarthy, W. N. Ellery（1998）: The mound-building termite Macrotermesmichaelseni as an ecosystem engineer, J. Trop.Ecol., 14, 507-520.9） Jouquet, P., S. Traore, C. Choosai, C. Hartmann, D.Bignell （2011）: Influence of termites onecosystem functioning. Ecosystem servicesprovided by termites, Eu. J. Soil Biol., 47, 215-222.10） Bloesch, U（. 2008）: Thicket clumps: A characteristicfeature of the Kagera savanna landscape, East Africa,J. Veget. Sci., 19, 31-44.11） Konate, S., X. Roux, D. Le Tessier, M. Lepage（1999）: Influence of large termitaria on soilcharacteristics, soil water regime, and tree leafshedding pattern in a West African savanna,Plant and Soil, 206, 47-60.12） Moe, S. R., R. Mobaek, A. K. Narmo （2009）:Mound building termites contribute to savannavegetation heterogeneity, Plant Ecol., 202, 31-40.13） Sileshi, G. W., M. A. Arshad, S. Konate, P. O. Y.Nkunika（2010）: Termite-induced heterogeneityin African savanna vegetation: mechanisms andpatterns, J. Veget. Sci., 21, 923-937.14） Joseph, G. S., C. L. Seymour, G. S. Cumming, Z.