ブックタイトルしろありNo.161
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しろありNo.161
Termi te Journal 2014.1 No.161 19 父島の野外で踏査したところ, イエシロアリ及びその食害痕を確認することは容易であり, 放置されて数年以上経った伐倒木には, 高頻度でイエシロアリのワーカーや食痕が見られた。また, イエシロアリが好むリュウキュウマツでは, 生立木にも蟻道が見られた。しかし, 母島においてはイエシロアリの生息密度は高くないため, 父島と同じように確認することは全く出来なかった。そのため, 母島での調査においては,初夏のスオーム時に有翅虫を捕捉することによって,分布域の把握を図った。 スオーム時においては, 巣から外界に多数の有翅虫が飛び出すため, イエシロアリの確認は容易である。ただし, 巣から出て飛行している有翅虫の確認であるため, 営巣個所を特定するのは難しい。有翅虫の飛行能力は低く, 風に漂って飛散することから, 移動距離は平均すると300 ~ 600m位が最も多いとされる19)。このため, 飛行中の有翅虫の捕捉箇所を分布域とすると, 500m程度の誤差が生じるが, 本研究では母島といったスケールでの分布域の把握を図ることから, 十分な精度と考えた。 有翅虫の捕獲においては, ライトトラップ法を用いた。ライトを点灯した無人のトラップを同時に複数個所に設置し, 広範囲にわたって捕獲を行った。 ライトトラップ調査の機材は, 有翅虫を誘引するためのライト(ランタン)を点灯し, 下部に水を張ったバケツを設置し, その水に捕捉するという簡易な構造である。2011年の調査で使用したライトトラップのライトは充電式蛍光灯ランタンで, 約4時間点灯し, 照度は250ルクスである。2012年には, より長時間点灯するよう光源をLED照明に変更したため連続点灯時間は約60時間に延び, 一方, 照度は5ルクスに減じた。 調査では, 一度, 有翅虫が補獲できた地点は「分布有」とし, 以降は調査地点から除外し, まだ分布が不明な調査地点とした。有翅虫をトラップに捕獲するには, トラップ設置個所の近くに巣が存在し, 設置した日にスオームが発生しなければならない。そのため, トラップに有翅虫を捕獲できなかった場合, 近くに巣がないことを意味するのか, 巣が存在していたがスオームがその日は無かったため捕獲できなかったのかの区別はできない。こうしたことから, 捕獲率を上げるために,スオームの時期と考えられる期間中, 出来るだけ多くのライトトラップを設置して調査を実施した。5.1 2011年 における現地調査の結果 2011年のライトトラップ調査は, 5月24日から6月19日の間の20日間, 延べ235地点で実施した。初回調査であったことから, より広範に把握することを目標とし, 移動が容易な車道沿いを中心に実施した。島内を網羅的に調査することは出来なかったものの, 車道沿いを中心として集落から北部にかけて広く調査地点を設けた。 この結果, イエシロアリの分布域の状況について,以下のことが判明した。① 母島の北部地域においては, 南部は桑ノ木山から,北部は東山にかけて分布が確認された。これは村の対策事業の駆除作業範囲を大きく上回る範囲である。② これまで, 長浜トンネル以南においてはイエシロアリの分布が確認されていなかったが, 蝙蝠谷を中心に南部(元地集落も含む)においても分布が確認された。③ 母島北部及び南部に分布が確認されたが, 島中央部において確認できなかった箇所があった。④ 母島北部の東山台及び大沢歩道は, 車道沿いではなく山域の歩道沿いの調査個所であるが, ここでもイエシロアリの有翅虫が確認された。したがって, それまで都道沿いに限定して分布しているとも言われていたが, 山域にも分布域が拡大していることが判明した。5.2 2012年における現地調査の結果 2012年のライトトラップの現地調査は, 6月7日から7月5日までの間の23日間, 50地点で実施した。特に2011年の調査においてイエシロアリの有翅虫が確認されなかった母島中央部の空白域における分布確認を優先した。また, ライトトラップの光源をLED照明としたため3晩連続の点灯が可能となり, 調査時間が飛躍的に延びた。 調査結果は以下の通りである。① 新たに, 長浜トンネルと蝙蝠谷の中間に位置する桑ノ木橋下流地点と蝙蝠谷の北東1㎞ほどに位置する乳房山遊歩道地点で確認された。② 島中央部の空白域については, 桑ノ木橋下流地点で新たに確認があった。③ 長浜トンネルから北側においては2011年に続き2012年もイエシロアリの有翅虫が確認された。④ 元地集落では, 2011年に確認された2地点で調査し,1地点で確認された。元地集落での確認地点数が減った理由として, 同時期に元地集落から北に1㎞足らずの距離にある蝙蝠谷において, 小笠原村の調