ブックタイトルしろありNo.162

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概要

しろありNo.162

Termi te Journal 2014.7 No.162 25状菌により生産される菌体外酸化還元酵素である。本酵素によるセロビオースの酸化はフラビンドメインで触媒され, それによりセロビオースの還元末端が酸化され, セロビオノラクトンが生じる。また, ここでセロビオースから得られた電子はヘムドメインヘと分子内電子伝達され, ヘムドメインから電子受容体へと伝達される(図1)。この酵素はキノン類を還元する能力を持つことから, 発見当初, その生理的役割はセルロース分解とリグニン分解の共役的代謝系に位置づけられてきた。しかしその後, CDHがリグニン分解能を持たない子嚢菌類にまで分布していることなどが明らかとなったことから, リグニン分解との関連性を考慮する必然性がなくなり, また, CDHがセルロースへの吸着能を有すること4, 5), 菌がセルロース培地で生育する際にセルロース表面上に局在すること6)などが明らかとなったことにより, 現在ではセルロース分解システムにおいて何からの役割を果たすと考えられている。しかしながら, 糸状菌のセルロース分解系においてはセロビオースに作用する酵素としてBGLが古くから見いだされており, その場合, CDHとBGLがセロビオースに対して競合するものとして位置づけられる(図2)。このような背景を受けて, 著者らはセロビオース代謝系におけるCDHとBGLの役割を明らかにするため, 遺伝子発現解析手法を用いた解析を実施した7)。具体的には, 白色腐朽菌Phanerochaete chrysosporiumを研究対象として, 各種培養条件下でCDH遺伝子とBGL遺伝子の発現挙動をTaqManプローブ法に基づく定量PCRにより解析した。その結果, CDH遺伝子の発現がセロビオースにより誘導されたのに対して, BGL遺伝子はセロビオース培地での発現量がグルコース培地などと比較して低く, また, セロビオースの存在によって遺伝子の発現抑制を受けることが明らかとなっ図2 CDH生産菌におけるセロビオース加水分解経路と酸化経路図1 セロビオース脱水素酵素の触媒作用