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概要

しろありNo.163

Termi te Journal 2015.1 No.163 9報 文Reports板倉の家とその生物劣化対策について筑波大学名誉教授 安藤 邦廣1.板倉とは 板倉は古代の倉の建築構法で, 厚板で壁を構成する構法の総称である。柱を立てずに厚板を積み重ねて,四隅で厚板を組み合わせるものと, 柱を立ててその間に厚板を落とし込むものの二つの類型がある。前者をせいろう倉, 後者を落とし板倉と呼び分ける。また, 前者が古い構法で, 歴史が下ると後者の構法に変遷する。いわゆる校倉は前者と同じ構法であるが, その部材断面が三角形と特異なもので, その形状をしたもののみが校倉と呼ばれる。(写真1) 板倉はその名の示すように倉の構法として発達したものであるが, 古代には神社建築や, 貴族住宅にも用いられてきたことが知られている。とくに神社建築はほとんどすべてが板倉構法であり, それは今日まで受け継がれている。森林資源に恵まれた日本列島で, 鎮守の森と板倉の社殿は日本人の信仰の原点といえる。 一方で倉庫としての板倉は, 稲作農耕の拡大とともに, 穀倉として一般庶民に普及して行くが, 室町時代後期(15世紀)に始まる戦国時代に, 木材資源の不足と都市化に伴う防火の要請で, 土塗りの倉すなわち土蔵に変わって行く。 しかし森林資源の豊かで, 都市化の遅れた東日本の農山村地帯では, 板倉が今日においても健在である。これは厚板の持つ優れた堅牢性と環境調節機能によるものといえる。これによって穀物や衣類, 調度品が良好な状態で長期保存できたのである。板倉は厚さ30㎜?60㎜程度の厚板で, 壁, 屋根, 床を構成しその本体を高床とし, 茅葺き等の屋根で覆う構法が一般的である。(写真2)(写真3)(写真4)写真1 伊勢神宮内宮 御稲御倉(みしねのみくら)写真4 長野県八ヶ岳山麓の落とし板倉写真3 茨城県八溝山麓のせいろう倉 材料はスギ写真2 長野県八ヶ岳山麓のせいろう倉 材料はアカマツ