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概要

しろありNo.163

18 T e r m i t e J o u r n a l 2 0 1 5 . 1 N o . 1 6 3端の微細な構造を観察したところ, 女王や王の触角先端には3~4つ角の内側に折り込まれたような構造(図2a)があることがわかった。筆者らは, この構造がシロアリの大顎を用いて噛み切られた痕跡ではないのかと考え, 試しに翅アリの触角をシロアリのワーカーに噛み切らせ, その断面の構造を観察した。その結果, ワーカーに噛み切られた触角の断面には, 女王や王の触角と同様の構造が確認された(図2b)。これに対し, 自然摩耗などの断裂を想定して触角をハサミで切断したり, ピンセットで引きちぎった場合は断面が潰れるなど, 上述した特徴を示さなかった(図2c, d)。これらの結果は,触角短縮の直接要因がシロアリの大顎による噛み切りであることを強く示唆した。4.誰が触角を噛み切ったか? 上述のように, 女王や王の触角はシロアリの大顎を使って切断されたものである可能性が極めて高い。では,女王や王は自分で触角を噛み切るのだろうか?それとも自分以外のコロニーメンバーに噛み切られるのだろうか?あるいはこの二つが同時に生じているのだろうか?筆者は触角短縮の要因が, 生殖虫が自ら触角を噛み切る“自切”ならば, 次の要素がなりたつだろうと考えた。図2  触角の先端構造写真。文献1)より改変。a, 生殖虫;b, ワーカーに噛み切られた翅アリの触角;c,ハサミを使って切断した翅アリの触角;d, ピンセットで引きちぎった翅アリの触角図3  単独飼育した初期生殖虫における観察期間中の触角節数の推移。文献1)より改変。赤点線区切り範囲は自切限界領域(詳細は本文)。図上の数字は平均値±標準偏差