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概要

しろありNo.163

Termi te Journal 2015.1 No.163 29ての時期においてコロニー活動量に対し有意な巣の温度の効果が見られた(夏期, 秋期, 冬期, 春期;P = 0.009,P < 0.0001, P= 0.0002, P= 0.03)。一方, 時刻による効果は秋期を除くすべての季節で見られなかった。夏期および秋期において, 活動量と温度の間に負の関係が見られた(表1)。また, 冬期および春期においては正の関係が見られた(表1)。夏期は冬期の約8倍の活動量(夏期, 冬期;1193±1138回/時間, 142±108回/時間, 平均±標準偏差)が見られ, 秋期, 春期は約2倍(237±220回/時間), 4倍(480±211回/時間)だった。 データを通年でプールして解析した結果, コロニー活動量と巣の温度との間には, 23-25 ℃にピークを持つ山型の関係性が見られた(図4)。4.考察 本研究は野外のコロニーを用いて初めて非セパレート型のシロアリでコロニー活動が温度サイクルの影響を受けて変動していることを示した。つまり, 温度はコロニー活動量を決定する主要な因子の一つであるといえる。一方, 時刻それ自体の効果は無いか, もしくは,ほとんど見られなかったので, 夏期に見られた昼低く,夜の後半に高いという活動量の日周変化は主に温度の日周変化の結果といえる。 データを通年でプールして活動量と温度の関係を解析した結果得られた一つのピークは, 彼らが活動するための最適温度であると考えられる。すなわち, 最適温度に達するまでは活動量と温度は正の関係を持ち, 最適温度以上になると負の関係になる。他のシロアリにおいても最適温度が存在することが示唆されている8- 9)。また, ヤマトシロアリにおいても室内における実験によって, 最適温度が存在することが報告されている10)。しかしながら, 室内実験における最適温度は30℃であった。野外における通常のコロニーでは子の世話や補食者に対するコロニーの防衛など様々な要因が彼らのタスクに対する労働力の配分に影響を及ぼすと考えられる。その結果, 彼らが最も活発に食材活動をする温度が室内実験で得られた結果と異なった可能性がある。 彼らのコロニー活動に時刻それ自体の効果は無いか, もしくは, ほとんど見られなかった(表1)。また,ワーカー個体を単離して室内で光・温度・湿度を一定条件で飼育しても彼らに内因的な行動リズムが見られない(渕側, 未発表)。すなわち, 彼らの行動は内因的リズム(概日リズム)による制御を受けていないことが示唆される。 本研究は, リズムを調査する目的として新たに確立された音響を測定する方法を用いて行われた。本方法はもちろん木材中にすむ他のシロアリ種にも適用可能である。他の非セパレート型シロアリも同様の活動の日周変化を示すのか興味深い。環境サイクル変化の乏しい場所にすむ生物の活動リズムがどうなっているのか明らかにすることで, 活動リズムの適応的意義の理解が深まるだろう。また, 彼らの活動が活発な時間帯とそうでない時間帯についての解明がすすめば, 効果的な駆除法の開発に貢献するであろう。5.謝辞 最後に, 本研究を精力的に実施した松原健太氏(岡山大学農学部), また研究の機会を提供していただき適切な指導・助言を下さった松浦健二博士(京都大学教授), 宮竹貴久博士(岡山大学教授)にこの場を借りて御礼申し上げる。引用文献1) Bloch, G. , G.E. Robinson (2001): Reversal ofhoneybee behavioral rhythms, Nature 410, 1048.2) Bloch, G. (2010): The social clock of the honeybee,J. Biol. Rhythms, 25, 307-317.3) Park, O., T.W. Roberts, S.T. Harris (1941):Preliminary analysis of the activity of the cavecrayfish, Cambarus pellucidus, Am. Natur.. 75, 154?171.4) Blume, J., E. Bunning, E. Gunzler (1962): Zur図4  全季節のデータをプールした際の活動量と巣の温度との関係。図中の曲線はスプライン法で回帰して得られた。文献11)より改変