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概要

しろありNo.164

26 Termite Journal 2015.7 No.1644. 木材への振動・音響信号の付加と摂食活性に関する実験的検討4.1 設定 前章までをふまえ, 実験系を図13とし, 以下に示す信号1?4をiPodから出力した試験体をそれぞれT1~ T4, 2章のC1を信号の付加のないT0とした計5種の試験体の摂食量を比較する。なお, 2章同様, 職蟻30頭および兵蟻3頭をTermites cell 1に2週間閉じ込め, 材(スギ辺材, 長さL=160mm, 断面積A=20×20mm2)を摂食させる。信号1:L=40mmの材で得られた摂食信号信号2:ピンクノイズ信号3:信号1を増幅した信号信号4:信号2を増幅した信号図14(a)に今回用いた信号付加装置を示す。図14(b)のように, 両面テープで木材へ接着した。 実験ではそれぞれ5秒間の信号を繰返し再生した。信号1と信号2は振幅の最大値が等しく, 信号2と信号3は5秒間の音のエネルギが等しい。また, 信号1から信号3の増幅率と信号2から信号4の増幅率は同じである。繰返し回数はそれぞれT0:18回, T1:20回,T2:20回, T3:23回, T4:18回とし, 全て2章で用いた実験箱で実施する。図13 木材への振動・音響信号と摂食活性に関する実験概要図図15  木材への振動・音響信号と摂食活性に関する実験実施時の実験箱内部図14  木材への信号付加装置(Murata PKM35-4A0),(a)接着面, (b)木材への設置例 続いて, STFTを行った結果の一例として, L=40および320mmの材で得られた各10分間の3次元のスペクトログラムを図10(a), (b)にそれぞれ示す。L=40mmに比べ, L=320mmの材では複雑な周波数特性となっており, フレーム毎に複数のピークが観測される。 そこで, STFTの結果に対し, フレーム毎の最大値となる周波数を求めた。結果の一例として, L=40および320mmの材で得られた各10分間のフレーム毎の最大値となる周波数を図11(a), (b)にそれぞれ示す。L=40mmの材ではほぼ全てのフレームで最大値が4.1kHz付近に分布する一方, L=320mmの材では2.6, 2.8,3.2kHz付近に分かれて分布している。EvansらはFFTから得られる周波数特性で最大値となる周波数を優位周波数(dominant frequency)と呼び, 材の長さ毎に1つを定めている。ここでは, L=320mmのような結果の場合, 優位周波数が複数存在すると考える。L=80および160mmの材でも同様に複数の優位周波数が確認された。 以上の手順で得られた摂食振動の優位周波数と材の長さとの関係を図12に示す。また, 比較のため, Evansらがダイコクシロアリに対し行った同様の実験結果5)を併せて示す。上記のように複数の優位周波数を考慮したにも関わらず, イエシロアリで得られた優位周波数の材の長さに対する変化の割合は, ダイコクシロアリで得られる同割合に比べ小さい。(a)(b)