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概要

しろありNo.164

32 Termite Journal 2015.7 No.1644. 札幌のシロアリ調査物件分布と地勢及び冠水地域との比較 札幌の地勢はJR函館本線及びJR千歳線よりも北側から北東の地域は泥炭地または低地が多く広がり, 南側から南西の地域には山地または扇状地が多く広がっている5)(図4)。黒点で塗り潰された箇所が石狩川を中心に広がる泥炭地域が多く, 1962年以降4回の大洪水いずれかで冠水した地域, 黒塗りが4回すべて冠水した水害の常襲地域である5)(図5)。その黒塗りの地域と重なる東米里は, 冬の間は交通の便が無く陸の孤島とよばれ, 春になると雪解け水で毎年のように水害に見舞われる地域だった5)。札幌市と周辺の方言で,野地(やち)と呼ばれる泥炭の湿地帯でシロアリがどう生き延びる事が出来たのかは大きな疑問である。茶色で示した箇所が泥炭地域, 赤色が市内で調査依頼分布の無かった厚別区(図6)。また, 青色で示した箇所が昭和37年以降冠水のあった区域, 赤色が市内で調査依頼分布の無かった厚別区である(図7)。泥炭地域及び冠水の多い地域では調査依頼分布が少なかった。しかし, 冠水泥炭地域とその近くにもシロアリ調査物件が6件散在していた。これは, 人為的に土砂, 建材等とともに運ばれたコロニーがその建物内もしくは敷地内のみで繁殖したとしても, 拡散移動はできなかった。仮に群飛移動したとしても, 冬季間の凍結で死滅してしまうと考えられたので, かつての泥炭地域はシロアリ繁殖抑制の一因となっていたと思われた。松浦6)によると, 池の周りや川の中州など, 増水するとすぐに浸水してしまうような場所の朽ち木からヤマトシロアリは見つかり, 台風で水に浸かった朽木でも白蟻は生存し続ける。また, 熱帯魚の餌として水槽の中に入れたヤマトシロアリのワーカーが最長で12日間も生き続けたと記載している。今回の調査結果においても札幌の泥炭地域にさえシロアリ調査物件は散在した事が解った。水はけの悪い地域では, 浸水しても短期間の浸水であれば生き延びていた可能性が考えられた。しかし, 浸水から逃れられても札幌の様な厳寒地域にお篠路兵村新琴似兵村琴似兵村山鼻兵村JR札幌駅図2  札幌市内の屯田兵兵村配置図森田「屯田兵」より引用図3  シロアリ駆除依頼分布図と兵村配置との比較引用:Google社地図情報サービスに調査依頼現場の住所を赤印で示した。表2  札幌市内、屯田兵入植規模とシロアリ調査物件数兵村名現区域入植年戸数シロアリ調査件数琴似兵村西区明治8~9年240戸15件山鼻兵村中央区明治9年240戸21件新琴似兵村北区明治20~21年220戸0件篠路兵村北区明治22年220戸0件