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概要

しろありNo.164

36 Termite Journal 2015.7 No.164解 説Commentary日本全国シロアリ分布図について京都大学大学院 農学研究科・助教 簗瀬 佳之1. はじめに 2004年に(社)日本しろあり対策協会によって発表されたシロアリ分布図を筆者を含め多くの方がこれまで参考にしてきた。それは協会員の情報提供によって,市町村単位でのシロアリの分布がまとめられた結果となっていた。そして, 2014年に(公社)日本しろあり対策協会ホームページ内の「シロアリ分布情報登録サイト(http://www.tanaka-online.net/hakutaikyo/)」から,協会員の情報提供によって, シロアリ被害が確認された位置を「点」としてプロットする形で, より被害発生地点を詳細にした「日本全国シロアリ分布図」が作成された。 日本におけるシロアリの分布, 特にヤマトシロアリとイエシロアリ, に関しては, 国立研究開発法人森林総合研究所の大村和香子氏による総説1)が発表されており, これまでの各種シロアリの分布とその生息を制限する気候因子との関係などについても詳細に解説されているため, 筆者は, 協会が作成した「日本全国シロアリ分布図」を中心に, 日本の木造建築物に被害を与えるヤマトシロアリ, イエシロアリ, アメリカカンザイシロアリ, ダイコクシロアリの分布または発生地点について解説する。2. ヤマトシロアリの分布 図1に示すように, ヤマトシロアリの被害発生は,他のシロアリ種に比べプロット数が多くなり, 全国各地に分布していることがプロットからも容易にわかる。「1月の平均気温?4℃のライン」=「ヤマトシロアリの野外分布北限」と筆者もこれまでずっと認識してきたことが, 北海道名寄市でのヤマトシロアリの被害報告以来, 一致しなくなっているということを最近知った。シロアリの生息分布と気候因子との関係ももちろん重要であることは十分理解しているが, 図1について今後重要となるのは, 特に北海道におけるプロット数の増加とその地点であると考えられる。継続して情報提供によるプロット数を増やしていくことで, 全国的にプロットが広がっていくことは予想できるが, 北海道における北限(または道東部)に関するプロットが増えた場合は, 情報提供した協会員に詳細を確認する必要がある。図1  ヤマトシロアリの発生確認地点((公社)日本しろあり対策協会作成「日本全国シロアリ分布図(2014)」より)3. イエシロアリの分布 図2に示すように, イエシロアリの被害発生は, 茨城県潮来市のプロットを北限として, その多くは海岸線に沿ってプロットされている。ヤマトシロアリの分布図同様, さらにプロット数が増えることによって,生息地点の境界がはっきりすることは予想される。ただし, ヤマトシロアリの分布図のように日本全国にプロットが分布しているわけではなく, 沿岸部に集中しているため, 今後北限に関連する発生情報と内陸部で