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概要

しろありNo.164

Termite Journal 2015.7 No.164 1 本年2月から, 当協会の会長に就任致しました。皆様のご指導・ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。 私が, 協会のお手伝いをさせていただくようになったのは, 既にご逝去された高橋旨象会長の時期でした。北海道立林産試験場から秋田県立大学に異動して4年目で, 平成11年のことです。当時, カラマツ蒸煮材のシロアリ被害に関連する研究を高橋先生と共同で行っておりましたので, 先生の依頼で理事をお引き受けしたのが始まりです。それ以来継続して理事をお引き受けしておりましたが, 3年前に筑波大学を定年退職するまでは本務が忙しいこともあって理事会にはほとんど出席できませんでした。したがって, 協会の組織や事業の詳細を十分理解しないまま過ごしてきたことになります。退職後は理事会に出る時間を確保でき, おおかた出席できるようになりました。また, 公益化した直後に副会長を仰せつかり, 協会の組織や定款・規則あるいは会員や連携団体との関係などについて皆様に教えて頂き, 頭の中がだいぶ整理されてきました。とはいえ, 会長としては新米ですので, 皆様のご支援を相当仰がねばなりません。 当協会は, 平成25年1月4日に公益社団法人に移行して3年目に入りました。移行前には公益目的事業とそれ以外という区別はありませんでしたが, 主な事業として行われてきた防除薬剤等の認定・登録制度, 防除施工標準仕様書・安全基準の策定, 文化財等蟻害腐朽検査事業, 機関誌「しろあり」の発行あるいは蟻害・腐朽に関する情報の提供などは, 元来公益的役割を持つものでありました。つまり, 建築物をシロアリや腐朽から守るために, 信頼性のおける薬剤等を用い, 適切な仕様書に基づいて施工することによって施主や建築メーカーが建物に要求する耐久性能を確保し, 結果として良質且つ耐久性の高い住宅のストック形成に大きく寄与してきたと思います。また, 文化財をはじめ公共性の高い避難所など, 国民・市民の財産ともいうべき建物の保全にも大いに貢献してきたのではないかと考えています。消費者にシロアリ防除について正しい知識で対応していただくための消費者相談事業にも連携団体のご協力を得て取り組んでおり, 大きな成果を上げています。 一方, 協会は, おもに建築物の蟻害・腐朽を防除することを事業としている会員によって構成されています。協会としてはこれらの事業に関して, 適切且つ合理的な防除事業ができるように, 主として技術的側面から支えていると言えます。その筆頭がしろあり防除施工士制度でしょう。シロアリ防除講習会を実施し, 防除施工士の検定・登録を行い, 確実に消費者の要望に応えることのできる技術者を養成しています。先に述べた薬剤の認定やシロアリ防除の工法及び材料等の登録, 標準仕様書の整備と一体をなすものです。さらに, 建築物の維持管理を確実に行えるようにするため, 蟻害・腐朽検査講習会を実施し, 検査員の養成と登録も行っています。 以上の公益的事業などを進めるためには, シロアリや木材腐朽菌の生態, 薬剤, 建築, 防除施工などの専門的かつ経験的な知識が必要・不可欠です。そのため, 住宅・薬剤・木材・木質材料等, それぞれのメーカー, あるいはそれぞれの専門分野の先生方や研究者のご協力も頂いております。 こうした現状を基に, 会長就任にあたりつぎのような点に留意して協会運営に携わりたいと考えております。 現在約5300人登録されているしろあり防除施工士の組織化を進め, 協会から常時適切な情報が発信でき, 防除施工士に対する社会的な信頼性がますます向上するような体制を検討します。また, 防除士の検定試験制度については, 防除施工士の拡大と受験者の便宜等を考慮した改革を行います。さらに現行の「しろあり及び腐朽防除施工の基礎知識」の全面的改訂をできるだけ迅速に遂行し, この書籍が建築士や建築技能士など幅広い方々にも有効に活用されるようにしたいと考えております。防除薬剤等認定制度の適切な運営や防除施工標準仕様書の改訂も継続的に行ってまいります。全国大会で行われている研究発表会の開催方法や内容などについても, さらに広く市民の方々が参加しやすい方向に発展させる方法を模索します。協会の認知度を高めるための広報も展開せねばなりません。これには, 現在の機関誌や会員交流誌の活用の他, 有効な手立てを検討したいと思っております。蟻害腐朽検査員は約940人おりますが, 前執行部で既に検討されてきた, 建築士が検査員資格を獲得できるような制度へと具体的に変更します。これと関連して, 国交省のインスペクション制度へ, 例えば関連技術の講習会の開催など何らかの形で貢献したいと思っております。 シロアリの被害や腐朽を防ぐことによって木造建築物を高耐久化・長寿命化することは, 炭素を長期間固定・貯蔵することにつながって地球温暖化を防止するだけでなく, 木質資源の温存と持続可能な社会の構築に貢献することになります。そのためにも, 会員及び本誌読者の皆様のご協力をお願いして, 就任のご挨拶といたします。巻頭言 公益法人三年目の会長に就任して土居 修一