ブックタイトルしろありNo.164

概要

しろありNo.164

38 Termite Journal 2015.7 No.164もプロット数は少ないが発生が確認されている。生息範囲が狭いことから, 筆者もほとんど目にすることはなかったが, 一度だけ被害が見られる木製品を京都まで送っていただいたことがある。大学の実験室に保管して, 連続でAE計測を行い, 木製品内部でのダイコクシロアリの摂食活動をモニタリングした経験がある。その際, 摂食活動に伴うAE波の検出が可能で, 長期間計測を続けたが, 冬の時期が近づくにつれ, AE発生が減少し, 最終的には停止した。室温低下による活性の低下であると考えていたが, 結局, 室温が上昇してもAEが再度発生することはなく, 実験室内で保管していたが, 死滅したと判断した。その後木製品を部分的に解体して, ダイコクシロアリの死骸の確認ができたため, AE発生が停止したことの理由がわかったが, アメリカカンザイシロアリと異なり, ダイコクシロアリは低い温度ではやはり生息が困難であるとの認識をもった。　ダイコクシロアリの分布については, 乾材シロアリであることから, 家具などの木製品や木材とともに移動する危険性もあるため, 今後, 奄美大島以北で発生が確認され, プロットされた場合は, 情報提供した協会員に再度確認する必要があると考えられる。６. おわりに　「日本全国シロアリ分布図」という形でマップは既に作成されたが, 「シロアリ分布情報登録サイト（http://www.tanaka-online.net/hakutaikyo/）」から協会員によるさらなる情報提供でプロット数（データ数）を増やしていき, 分布図を逐次アップデートしていく形で, より充実させていく必要がある。そのためにも協会員にはより多くの情報を積極的に提供していただくことをお願いしたい。そして, 特にこれまで発生が確認されていなかった地点での発生情報に関しては, 協会側から情報提供の協会員に再度確認して, 精査していく必要がある。引用文献１ ）大村和香子（2015）：移りゆくシロアリ生息分布?防蟻対策の地域区分とのかかわり?, 木材保存, 41（3）, 102?107.２ ）吉村　剛（2015）：アメリカカンザイシロアリの被害地域の変遷と現状, （公社）日本木材保存協会 第31回年次大会研究発表論文集, 104?109.３ ）簗瀬佳之・藤井義久・奥村正悟・吉村剛・今村祐嗣（2001）：AEモニタリングによるアメリカカンザイシロアリの食害検出, 環動昆, 12（2）, 53-67.図４　 ダイコクシロアリの発生確認地点（（公社）日本しろあり対策協会作成「日本全国シロアリ分布図（2014）」より）